【三重県の行政書士が解説】医療法人の事業承継

いわゆる一人医師医療法人は昭和60年12月施行の医療法改正で設立が認められるようになりました。昭和63年にはその設立認可手続きが簡素化されたところから急激に増加しています。昭和60年の医療法の改正、そして昭和63年の手続きの簡素化が行われた頃に設立された一人医師医療法人は設立されてから30年を超えるという時期を迎えており、事業承継が大きなテーマとなってきているのではないかと思われます。

ここでは、特に一人医師医療法人について、事業承継の事例を解説していきます。

医療法人の事業承継は基本的には親族への承継か親族外第三者への承継のいずれかに分類されることになります。

医師資格を持つ親族がいる場合でも親族内での承継に至らないケースも多くあります。

事業承継を、①承継ができなかったケース、②親族に承継するケース、③親族外に承継するケースに分けて見ていきます。

目次

医療法人の事業承継ができなかったケース

まずは、承継が成功したケースとの対比という観点で、承継ができないケースでの注意点に着目します。

  1. 一般に院長の年齢とともに患者層全体の年齢も上がっていくので売上の減少が考えられる
  2. 診療所の廃止が近づくとスタッフのモチベーションを保つことも難しくなることが考えられる
  3. スタッフの退職金、その後の雇用についても考慮しなければならない
  4. リースや借入金の残高についての対応が必要となる
  5. 患者さんを信頼できる他の診療所等に紹介することを考える必要がある
  6. 診療所を賃貸しているならば、退去時の原状回復費用が必要になることも考えられる
  7. 特に、院長急死の場合には、事務処理や患者対応のため売上がないにもかかわらず人件費の支払が必要になることが想定される

2以下への対応は1を起因としてより対応が難しくなっていくことが考えられます。

医療法人を親族に承継ができるケース

親族への承継が成功するということは、承継ができなかったケースで想定された注意点やデメリットがほぼ発生しないものと考えてよいと思います。では、親族への承継を成功へ導くために考慮すべきことはどんなことでしょうか。

承継する親族とのコミュニケーション

医師、歯科医師の資格を持っていれば、日本国内のどこでも仕事をすることができます。また、仕事のやりがいを大いに感じることができる職種です。

親の診療所経営が軌道に乗っていて非常に大きな経済的メリットがあったとしても、子供が診療所経営を引き継がないというケースが多く見られます。親世代と子世代では大学医学部で学んだ内容、臨床での経験、取り巻く社会情勢等の環境が大きく異なりますので、医療に関しても経営に関しても考え方が異なって当然のことと思われます。

そのため、コミュニケーションが非常に重要になります。分かっていながらも承継の話をなかなか切り出せないことも多いと思われます。しかし、ここをきちんとしていかないと親族内承継にたどり着かないだけでなく、表面的には承継ができたとしても本当の成功にならないケースも存在します。

事業承継しない相続人への配慮

複数の子供がいる場合には、事業承継をしない子供への配慮も重要となります。一定の成功を見ている診療所を引き継ぐことができる子供と、引き継ぐことができなかった子供では、引き継いだ財産価値が大きく異なることが考えられます。

さらに、成功している診療所を引き継ぐことは、その時点での財産価値だけでなく、将来に向けての安定的な収入源を引き継ぐことができるわけですから、子供の間での平等を達成するのは非常に困難であると考えられます。

そのような状況下で、医療法人の持分や診療所の不動産に関して遺産分割がまとまらないと、その後の診療所経営に困難が発生することが考えられます。

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突発的な事故や病気、急死が理事長に発生した場合の親族内承継

医療法人の場合には、診療所の開設者が医師個人ではなく医療法人となるため、個人開業の場合と違い、診療所の廃止及び開設という手続きは不要となります。

よって、同じように承継者がいた場合でも、医療法人の方が手続的にはより簡易に済みます。ただ、事業承継の本質的に重要な部分は変わりません。このように突発的に承継が発生した場合には、それまでの日常における配偶者の関りやナンバー2の存在が重要となるそうです。理事長が急逝した場合に大切なのは、周りのサポートです。理事長の医師仲間におけるネットワークに配偶者がかかわることができていれば、急遽理事長に就任した承継者にとっても大きな助けになります。

また、スタッフの不安を鎮めることについても、配偶者や優秀なナンバー2が大きな役割を果たすことになると思われます。理事長承継者が親族内で確保できたなら、突発的な激変においてまず考えなければならないのは、患者とスタッフのことになるでしょう。この時に配偶者や配偶者に代わるナンバー2の存在があったならば、激変に耐え得る可能性もより大きくなります。

親族外承継のケース

親族外承継であっても、地域医療への継続的な貢献、スタッフの雇用問題解決を達成することができますが、親族外承継の場合には承継者への譲渡対価の決定が大きなテーマとなります。親族外の承継者にとっては、承継後の売上の継続可能性が最も重要な価値基準になるでしょう。よって価値が高いうちに、さらには価値が保てるように承継してもらうことが重要であり、被承継者にとってもそれが一番のメリットに繋がることになります。

突発的な原因による親族外承継であっても、医療法人の場合には医療機関の開設者変更とはなりません。つまり、保険医療機関としての継続が可能であるということが、個人事業と比較した場合の最大のメリットです。

よって、経営が良好な医療法人であるならば、 それを承継したい第三者は比較的現れやすいかもしれません。しかし、このような場合には大体、売手側が売却を急ぐケースが多く、買い手側有利に承継の交渉(事業の譲渡価格)が進むことがほとんどのようです。計画的に時間を掛けて承継することが、親族外承継の成功に結び付くと言えるでしょう。

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三重県医療政策課 https://www.pref.mie.lg.jp/CHIIRYO/index.htm

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