【三重県の行政書士が解説】医療法人の分院開設

医療法人を設立するメリットの1つは分院を開設することができることです。

近年では、在宅医療ニーズの高まり等により、無床診療所であっても複数の医師によるグループ診療や、同一グループで複数の診療所を展開するなど集約化が進んでいます。

以下では、医療法人の分院開設の実際の手続の流れを解説します。

目次

分院開設の手続の実務

分院開設に向けての実際の許認可手続きについては、以下の流れとなります。

1.定款変更認可申請書素案作成

所管する都道府県のホームページにアクセスし、都道府県が条例として定めている申請書式を、添付書類まで含めてダウンロードします。変更内容ごとの添付書類一覧等の案内があるのが通例で、それに沿って必要となる書類を特定し、ファイルとして保存してから順次作成します。

書面の作成段階では、単にそれぞれの様式に文字を埋めるのではなく、分院開設の目的からその具体的計画に至るまで、一連のストーリーを書面上に表現する、というスタンスが重要です。

また、事業計画、収支計画、人件費明細書のように、書面相互での数字の整合性が求められる場面がありますので、特に注意が必要です。

2.定款変更事前審査(都道府県)

すべての書類の入力と準備が整ったら、実際に申請するときと全く同じ形でクリップ留めし、都道府県提出用と申請者控えの2部、全く同じものを作成します。なおこの段階では、押印は一切せずに、添付する登記事項証明書や印鑑証明書類もすべてコピーを添付します。

手元に控えを残し、所管の都道府県に事前審査用の1部を提出します。都道府県によっては、事前に担当者とアポイントメントをとり、素案を持ち込んだ際にその場で事前審査をして修正点の確認をする例や、郵送で素案を送付し、修正点はFAXまたはメールのやり取りで進める、という例もありますので、所管の都道府県に確認します。

事前審査の段階で、申請書素案の制度によってはいったん持ち帰って全面見直しを指示される場合も、逆に即日の本申請OKとする回答が来ることもあります。素案審査が終盤に入ったら、各書面の押印作業にかかり、本申請の準備を開始します。

3.診療所開設手続打診(分院の所轄保健所)

都道府県への定款変更認可申請の準備が進んできたところで、次の診療所開設手続に向け、分院予定地を管轄とする保健所に打診します。

まずは、定款変更認可申請書と同様に、所轄保健所のホームページからすべての添付書類を含む申請書をダウンロードし、診療所開設許可申請書案を作成して所轄の保健所に持ち込みます。保健所では、診療所建物の使用権限、診療所名称、管理医師、診療所の構造設備等の許可要件につき確認し、申請書類に修正が必要な場合はその旨を指示します。

定款変更認可申請に際して都道府県に提示した新定款中の診療所名称については、たとえ都道府県が内諾または定款変更を認可していたとしても、診療所開設許可申請は地方自治法に基づく全く別の自治事務であり、保健所設置者が法人を所管する都道府県と異なる場合、当該保健所は定款変更認可に際しての都道府県の判断に拘束されません。

そのため最低限でも、新たに開設する分院の名称については、定款変更認可申請前に所轄保健所と協議しておくことが重要です。

4.保険医療機関指定申請打診(分院開設予定地を所轄する地方厚生局都道府県事務所)

定款変更認可、診療所開設許可の段階までそれぞれ内諾を得た時点で、地方厚生局都道府県事務所にも保険医療機関指定についての事前協議をします。

この段階での厚生局での主な審査ポイントは、以下のとおりです。

  • 定款変更認可、登記等が完了しているか?(確実に完了しそうか?)
  • 保健所が開設許可をしているか?(確実に許可を得られそうか?)
  • 管理者となる医師の常勤性に問題はないか?

特に、管理医師の常勤性について、厚生局は全国の保険医療機関のデータベースにアクセスし、他の保険医療機関での勤務医や管理者としての届出済み事項につき照会します。他の保険医療機関で勤務医として届出が出ている場合は、退職予定等につき確認し、自ら管理者となる診療所の勤務に影響する他院での勤務がなくなるかどうかにつき、確認されます。

以前に勤務していた際の届出が、その保険医療機関の手続き漏れで抹消されていない場合が散見されますので、事前の確認に加え、過去の勤務が残っている場合はこの段階で抹消の届出をしてもらうよう、以前の勤務先に依頼することになります。

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5.定款変更認可申請(都道府県)

事前審査が完了すると、電話またはFAXなどにより本申請OKの旨の連絡が入ります。連絡が入ったら、速やかに申請書類を以下の「正」「副」「控」の要領で整え、都道府県窓口もしくは本院所在地の保健所など、指定された窓口に申請書類を持ち込むことで本申請します。申請書類は正副2通を提出し、認可書と一緒に副本が返却されることが通例ですが、所轄保健所を経由しての申請の場合等、提出部数が多くなる場合がありますので、必ず所官庁に確認してから提出します。

1.正本

添付する議事録や就任承諾書等は、すべて理事長、議事録署名人、就任者本人等当該書面の作成者による押印済み原本を添付します。また、原本を提出できない書面(医師免許証、賃貸借契約書等)については写しを添付し、その写しが原本に相違ない旨の理事長名での原本証明書を作成し、申請書綴りの末尾に添付するのが通例です。

2.副本

認可後、認可書とあわせて都道府県知事の公印で袋綴じされて返却されます。副本への添付書類はコピーでも構いませんが、社員総会議事録等は法人保管用原本をここに綴りこみ、認可証とあわせて保管しておくことで散逸を防ぐこともできます。

3.控え

正式申請後、許可書が交付されるまでの間は、申請の事実すら何の証明もできません。そのため、実務的には副本と全く同じコピーをもう1通作成し、申請時に都道府県の受付印押印後に回収、申請中(認可待ち)の状態であることの証拠資料とし、認可後は申請代理人の保管用とするのが実務の通例です。

なお、平成27年3月31日までは、都道府県をまたがって病院、診療所等を開設する法人にあっては、広域医療法人(通称)として許認可権者が地方厚生局長であるため、申請書の名宛人を地方厚生局長とし、申請書正本を2通(都道府県知事あての場合より一通多く)提出する取扱いでしたが、同年4月1日以降は都道府県知事の所管となっています。

また、申請後、認可までの期間は1~2週間(行政手続法に定める標準処理期間は14~25日と定める都道府県が多い)が通常です。

6.認可書受領後(都道府県、法務局)

変更された新定款の効力発生日は、都道府県知事の認可日(認可書に記載されている日)となります。認可書受領後2週間以内に法人の目的変更登記を申請し、登記が完了したところで、登記事項証明書を添付して都道府県に登記事項届を提出します。

7.開設手続(分院所在地を所轄する保健所)

定款変更の認可を受け、目的等変更登記が完了したところで、所轄保健所に診療所開設許可を申請します。

こちらをご覧ください。
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8.保険医療機関指定手続(分院所轄地方厚生局都道府県事務所)

医療法に定める診療所開設手続が終了したら、分院所在地を所轄する地方厚生局都道府県事務所に保険医療機関としての指定を申請します。

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三重県医療政策課 https://www.pref.mie.lg.jp/CHIIRYO/index.htm

東海北陸厚生局三重事務所 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/gyomu/bu_ka/mie/index.html

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