就業規則は、病院、クリニックで働く上でのルールを定めたものです。職員数が少ない場合でも就業規則を作成することをお勧めします。
就業規則の作成義務
就業規則は、労基法89条により職員数が10名以上いる事業所に作成義務と届出義務があり、これに反すると労基法120条により30万円以下の罰金が課せられることになります。
この職員数が10名以上とは、1つの事業所において正職員のみならずパート職員も入れて計算をするため、多くの病院・クリニックが対象となるのではないかと思われますが、メディカルサービス法人(MS法人)などが別にあり、一部の職員がMS法人に雇用されているのであればそれは基本的には全く別の事業所として扱われることになります。
就業規則は基本的にどのようにでも作成することができますが、ルールとして必ず記載しなければならない項目(絶対的必要記載事項)とルールが存在するのであれば記載をしなければならない事項(相対的必要記載事項)があり、これらを網羅する必要があります。そして、ルールの変更などがあれば就業規則も併せて変更することになります。
絶対的必要記載事項 | ・始業および終業の時刻、休日、休暇、就業時転換に関する事項 ・賃金(臨時の賃金等を除く、以下同じ)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切および支払いの時期ならびに昇給に関する事項 ・退職に関する事項 |
相対的必要記載事項 | ・退職手当(適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法、退職手当の支払いの時期)に関する事項 ・臨時に支払われる賃金等(退職手当を除く)、最低賃金額に関する事項 ・労働者に負担させるべき食費、作業用品などに関する事項 ・安全および衛生に関する事項 ・職業訓練に関する事項 ・災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項 ・表彰および制裁についての種類および程度に関する事項 ・労働者のすべてに適用される定めをおく場合は、その事項 |
職員の権利主張と就業規則
病院・クリニックの中には就業規則を作成することに対して極めて消極的な姿勢を示すところが少なからず存在します。理由を確認すると、就業規則を盾にして年次有給休暇の取得など労働者としての権利を主張してくる可能性があるということがあります。そうした職員というのは、就業規則があってもなくてもインターネットなどで情報をすでに収集しているため、どのタイミングであっても権利を主張してきます。
また、一部のそういった職員のためにルールが明確化されていないと、その他多数の職員は院長先生の顔色を見ながら確認をしに行かなければならないといったことや、同じ職員間で扱いが異なったりということでモチベーションを低下させてしまう可能性があり、組織風土全体でみると就業規則作成に消極的な姿勢はマイナスの方向に働いてしまいます。
就業規則の職員への周知
就業規則は作成するだけでは効力がなく、職員の意見を聴きそれを証明する資料として「意見書」を添付して管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
この意見聴取においては、職員から反対意見が仮にあったとしても、その意見に対して100%改善しなければならないというものではありません。それよりも労使対等の立場で考えて進めたかということが重要となります。したがって、例えば、職員から意見書において「○○について変更をして欲しい」といった意見が出たとしても組織統制上、その必要性が薄いと院長先生や事務長さんが判断したのであれば、それを変更することなく就業規則を提出することができますが、あまりにも強引にそれを行うと組織風土が悪化してしまう恐れもあるので注意が必要です。
また、ルールを浸透させ、最小限の不満や不安で新しい就業規則を運用することを考えれば、就業規則改定にあたっての説明会の開催はもちろん、場合によっては個別に「就業規則作成にあたっての質問票」を渡し、その提出によって院長先生や事務長さんと個別面談を進めるといった方法も考えられます。
こうした面談を行い。コミュニケーションを図ることで誤解が解けたりすることもあり、また職員のことを十分に考えてくれているというように思ってもらえることもあるため、このような質問票による対応は組織風土改善においても有効な手段となります。
病院・クリニックで作成しておきたい就業規則
本来であれば、就業規則の中にすべてのルールを定めた方が良いかも知れませんが、情報量として膨大になり、ルール変更の都度、条文の変更などの作業が発生するため十分な管理が難しくなります。
そのため、必要に応じて賃金に関することは「賃金規程」、退職金に関することは「退職金規程」といったように別で規程化して運用することも考えていかなければならず、病院・クリニックにおいては、最低限、以下の規程の整備が望まれます。
また、一度作成をした就業規則というのは未来永劫その規程を使っていくというのではなく、組織も成長とともにさまざまな問題に直面する可能性があることから、1年に1回程度は、各種法改正への対応と同時に実情に照らし合わせて修正を重ねていくことも考えなければなりません。
正職員就業規則 | 正職員の基本的なルールを定めた規程。 |
パート職員就業規則 | パート職員の基本的な就業ルールを定めた規程。特に正職員との違いについて意識して作成をする必要があります。 |
賃金規程 | 賃金の支給ルールや諸手当の支給方法などを明確化する規程。 |
退職金規程 | 職員の退職時に支給する退職金についての基本的なルールを定めた規程。 |
育児・介護休業規程 | 育児・介護休業法で定める育児・介護休業についての運用を定めた規程。 |
慶弔見舞金規程 | 職員の慶弔時の見舞金の扱いについて定めた規程。 |
研修規程 | 研修参加にあたってのルールを定めた規程。 |
情報管理規程 | 各種情報管理について定めた規程。 |
被服管理規程 | 制服の扱い方法などについて定めた規程。 |
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