【三重県の社労士が解説」クリニックの賃金・お金に関する就業規則 

目次

賃金を決める「原則」と「公平性」そして「支払い能力」

「賃金」は、人材マネジメントのための重要な要素です

賃金の重要さは、改めて言うまでもなく、働く人にとっては、賃金は生活の唯一、または最大の糧です。

そのため、労働基準法でも、賃金については厳しい規制をかけています。クリニックとしてはこうした法的規制に違反しないように賃金を決定し、支払うことが重要になります。

しかし、賃金に関して大切なことは、それだけではありません。

賃金はクリニックにとって、職員さんの働く意欲を引き出し、働いてもらうための最も効果的な手段です。つまり、人材マネジメント上の重要なツールでもあるのです。

賃金体系をいかに設計・運用するかで、賃金は「利益を圧迫するコスト」にもなりかねませんし、逆に、「価値を生み出す投資」にもなりうるのです。

就業規則の関連する規定を見て行く前に、まずは原則的なところからおさらいしておきます。

「賃金決定の3原則」とは

職員さん1人ひとりの賃金をどうやって決めるのかは、クリニックによってさまざまです。ただ、どんな賃金決定方法をとるにしても、守らなければならない共通の原則があります。

これを「賃金決定の3原則」といい、その態様は次のとおりです。

  1. 労働対価の原則
  2. 生活保障の原則
  3. 労働力の市場価格の原則

1の「労働対価の原則」は、賃金は働く人がその労働の対価として受け取るお金だということです。働かなくても賃金が支給されたり、提供された労働に対して、高すぎたり安すぎたりする賃金を支払うことは本来はできないということです。

また2の「生活保障の原則」は、賃金がほとんどの働く人にとって唯一の生活の糧であることから、賃金として支払う金額が、生活を維持するのに十分であることを求めるものです。

そして、3の「労働力の市場価格の原則」は、需要と供給の関係から、世間相場を意識した賃金決定を行うことです。現実に、世間相場より著しく低い額を設定するのは不可能です。

この3原則を無視して賃金体系を作ったり、賃金額を決めたりすることはできません。意識する・しないにかかわらず、賃金は必ず、この3原則の枠組みの中で決まります。

賃金の「2つの公平性」

賃金を決める際に、この3原則以外に考えなくてはならないのが、「内部公平性」と「外部公平性」です。

これは、自分の賃金額をクリニック・病院内で、または、他のクリニック・病院の水準と比べたとき、妥当と感じるか、不公平と感じるかということです。

内部公平性

人は、自分の賃金額がクリニック内の他の職員と比べて高いのか低いのかを気にします。そして、もし低い場合、その理由に納得がいかないと不満を感じます。

しかし納得感があれば、たとえ賃金が低くても、ゼロではありませんがそれほど不満は感じません。

こうした、他の職員と比べたときの賃金の妥当感を、「内部公平性」といいます。賃金が内部公平性に欠けると、人はやる気をなくしてしまいますから、業績に悪影響を与えることもあります。

こうした事態を避けるには、賃金体系を整備し、納得感のある賃金決定ができるようにしなくてはならないのです。

外部公平性

一方、人は自分の賃金額が他のクリニック・病院に比べてどうなのかも気にかけます。特に、他のクリニック・病院の賃金水準は気になるところでしょう。他のクリニック・病院に比べて自分の賃金が妥当かどうか、これを「外部公平性」といいます。

外部公平性に欠ける、つまり自院の賃金水準が他院と比べて不当に低いと職員さんが感じると、人材の流出につながります。賃金の外部公平性は、アトラクション(人材獲得)やリテンション(人材引き留め)に密接な関係を持つのです。

クリニックの支払い能力

賃金額を決定するときの原則と公平性は以上のとおりですが、現実問題として、賃金総額(正確には人件費総額)がクリニックの支払い能力を超えることはできません。

これは当たり前のことなのですが、人件費総額を正確に把握しないまま、賃金や賞与を決めているようなケースもあります。

賃金を決める際には、自院の支払い能力にも十分気を付ける必要があるのです。

以上を要約すると、賃金は①クリニックの支払い能力を上限に、②労働対価の原則、生活保障の原則、労働力の市場価格の原則に準拠し、③内部公平性と外部公平性を満たすように決定する、ということになります。

支払い方法に関する「賃金支払の5原則」

賃金に関する原則では、もう1つ、「賃金支払の5原則」も押さえておかなければなりません。

労働基準法では、賃金が確実に職員さんの手元に渡るようにいくつかの規定を置いています。これを「賃金支払の5原則」といい、次のとおりです。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月払いの原則
  5. 一定期日払いの原則

重要なポイントなので、それぞれ詳しく解説していきます。

1.通貨払いの原則

これは、賃金は現金で支払わなくてはならない、ということです。

ただし、現実には口座振込にしているクリニックが多いですから、「あれ?」と思われるかも知れません。

実は、賃金の口座振込は、この「通貨払いの原則」の例外という扱いなのです。

では、どのような場合に賃金の口座振込が認められるかというと、次の条件を満たしたときです。

  • 本人の同意がある
  • 本人名義の口座に振り込む
  • 賃金支払日の午前10時までに引き出し可能である

この場合の「本人の同意」は、厳格には問われません。

たとえば本人が、「給与振込申請書」などの用紙に口座番号などの必要事項を記入して提出すれば、それで同意と認められます。改めて「同意書」を書いてもらう必要はありません。

また、賃金を現物支給とすることも、この原則に違反します。

業績不振のために、突然、給与の代わりに現物を支給するなんてことは許されないわけです。

例外として、労働組合があるクリニックはほとんどないと思われますが、労働組合との労働協約(労使協定ではないので注意が必要です)がある場合と法令に定めのある場合は認められますが、労働協約は労働組合がないと締結できませんから、労働組合のないクリニックは現物支給はできません(この点が、過半数代表者が締結できる労使協定と異なる点です)。

現物給付で間違えやすいのが通勤定期です。

通勤手当の支給に代えて、通勤定期をクリニックが購入して職員さんに渡しているケースがあります。しかし、これも現物支給の扱いになりますから、労働協約が必要です。

職員さんの便宜を図っているつもりでも、労働協約なしにやると法律違反となりますので注意が必要です。当然、労働組合のないクリニックでは不可能です。

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2.直接払いの原則

これは、賃金は直接本人に支払わなくてはならない、という原則です。代理人に支払うことも禁じられています。また、賃金の差押さえも、裁判所の命令がある場合などの場合を除いて、禁止されています。

ただし、「使者」への支払いは認められています。これは、本人の支配下にあると認められる妻や子が本人の印鑑を持参し、本人名義で受領するような場合を指します。

3.全額払いの原則

賃金は、全額本人に支払わなければなりません。

いわゆる「ピンハネ」は違法です。ただし、次のとおり例外がいくつかあります。

①法令に定めのあるもの

源泉所得税や社会保険料などは、あらかじめ賃金から差し引いてもかまいません。

②労使協定のあるもの

過半数労働組合、または過半数代表者と書面で協定を結んだものについては、賃金からの控除が可能です。

財形貯蓄の積立金などが考えられます。

③その他

減給の制裁を行う場合と、支払い賃金の端数処理をする場合です。

端数処理とは、毎月の賃金の100円未満の端数を、50円未満を切り捨てて、50円以上を100円に切り上げること、あるいは1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越すことで、これは許容されています。

4.毎月払いの原則

この原則により、賃金は毎月1回以上支払わなくてはなりません。したがって、年俸制であっても、実際の賃金の支払は毎月行う必要があります。

ただし、賞与や臨時の賃金は除きます。例えば、一定期間の勤怠状況に応じて支払う「皆勤手当」などについては、1か月を超えて算定することに合理的な理由があれば、毎月支払わなくてもかまいません。しかし、合理的な理由なく、ただ毎月払いの適用を回避するためだけである場合は、違法とされます。

5.一定期日払いの原則

賃金は「毎月〇〇日」というように、期日を定めて支払わなくてはなりません。これは、就業規則にもそのように記載することが必要です。

日が特定されていなくても、月給制の場合に「毎月末日」という定め方は問題ありません。これは、給与の支払日が確定できるからです。

ただし、月給制の場合に「毎月第3金曜日」や「毎月20日から25日の間」というような定め方はできません。

また、支払日が休日になる場合は、支払日を繰り上げ・繰り下げすることは可能ですが、就業規則にその旨を定める必要があります。

就業規則に記載していくための賃金の分類

原則を理解できたところで、賃金体系を就業規則に表していくときの賃金の分類についてもみていきます。

法律でいう「賃金」とは

「賃金」は法律でどのように定義されているのでしょうか?労働基準法では、次のように定められています。

労働基準法第11条

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

つまり、次の2つの条件を満たすものは、名前がどうであれ法的にはすべて「賃金」です。

  • 労働の対価である
  • 使用者が労働者に支払う

ちなみに、ここでいう「労働の対価」とは、必ずしも成果や貢献度に応じて支払われるものとは限りません。就業規則、労働契約など支給要件が明確に定められていて、労働者に請求権があるものは、すべて労働の対価として「賃金」となります。

たとえば、「退職金」も、就業規則や退職金規程などで支給条件が定まっていれば、「賃金」とされます。

逆に、「労働の対価」でないものは、名称が何であれ、法的には「賃金」とされません。たとえば、出張旅費や日当は、支給条件は明確ですが、実費弁償的なものですから 「賃金」となりません。

また、支給条件が不明確で、任意的・恩恵的な福利厚生手当なども賃金とはなりません。ただし、福利厚生的な手当でも、就業規則などで支給条件が明確に定められているものは賃金となります。

「基準内賃金」と「基準外賃金」を知る

実際に賃金体系を設計する際には、賃金をいくつかに分類します。

次の5種類に分類することが一般的です。

  1. 基準内賃金
  2. 基準外賃金
  3. その他手当
  4. 賞与(ボーナス)
  5. 退職金

1と2を分ける「基準」は何なのかというと、「所定労働時間」です。

所定労働時間に対して支払われる賃金を基準内賃金(所定内賃金とも言います)、時間外労働など、所定時間外の労働に対して支払われる賃金を基準外賃金と言います(所定外賃金とも言います)。

基準内賃金には基本給のほか、役職手当、家族手当、住宅手当などが含まれます。

基準外賃金には、時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当などが含まれます。

3の「その他手当」は、通勤手当などを指します。このほか、寒冷地手当、特殊勤務手当など、支給対象が限られているものを入れるのが一般的です。

4の「賞与」と5の「退職金」は、就業規則上は賃金と分けて考えるのが一般的です。そして、記載も分ける方が良いでしょう。

就業規則にも賃金の分類を次のように記載し、定義しておきましょう。

【賃金規程例】

(賃金の構成)

第〇条 賃金の構成は次のとおりとする。

(1)基準内賃金

  1. 基本給
  2. 役職手当
  3. 家族手当
  4. 住宅手当

(2)基準外賃金

  1. 時間外勤務手当
  2. 休日勤務手当
  3. 深夜勤務手当

(3)その他手当

  1. 通勤手当

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