障害年金不支給増の報道を受けて認定状況調査報告書が発表されました

障害年金を申請して不支給とされた人が令和6年度に増えた問題が報道され、それを受けて厚生労働省は日本年金機構と連携のもと、令和6年度の障害年金の認定状況について調査し、結果が発表されました。

また、令和6年度の不支給割合が令和5年度に比べ約1.5倍に増えたとのサンプル調査の結果も発表されました。

目次

集計結果(令和6年度)

新規裁定

  • 新規裁定1,000件のサンプルのうち、非該当は130件(13.0%)と、令和5年度の非該当割合(8.4%)より上昇していました。また同時に、令和元年度の障害年金業務統計公表開始後、過去最高だった令和元年度(12.4%)とおおむね同水準であったと発表されています。
  • 令和6年度の非該当割合を種類別にみると、精神障害で12.1%、外部障害で10.8%、内部障害で20.6%という結果が出ました。令和5年度では、精神障害が6.4%、外部障害が10.2%、内部障害が19.4%で、令和6年度と令和5年度を比較すると、精神障害の非該当割合の上昇が大きいことが分かります。
  • 内部及び外部障害は、医学的な検査数値等の客観的な指標が障害認定基準に定められており、不支給事案の個別確認の結果、判断の理由が審査資料に明確に記載されているなど、特段の問題点などは確認できなかったとされています。
  • 一方、精神障害は、そうした指標による評価が必ずしもできない部分があり、ガイドラインや障害等級の目安が定められています。この障害等級の目安との関係をみると、不支給事案に占めている「目安より下位等級に認定され不支給となっているケース」または「目安が2つの等級にまたがるものについて、下位等級に認定され不支給となっているケース」の割合は75.3%となっていました。

再認定(更新)

  • 再認定10,000件のサンプルのうち、令和6年度の支給停止は105件(1.0%)、令和5年度の支給停止割合(1.1%)と同水準であった。

問題と指摘された部分についての報告書の内容

組織的な指示や対応があったか

事実関係

  • ヒアリングによると、障害年金センター長から、認定の根拠を明確にすべき等といった指摘はあったが、理事長やセンター長等が審査を厳しくすべきといった指示を行っていた等の事実は、確認できなかった。
  • 認定医に関する文書は、ヒアリングによると、担当者間で引継ぎ等に使用していて、職員が担当する認定医は1~3名程度等であり、選択する余地はほとんどない旨の話があり、組織的に認定をコントロールする意図のものとは認められないが、認定の傾向に関することなど、一部に適切でない記載内容が含まれていた。

今後の対応策

  • 指定医に関する文書の廃止
  • 担当認定医の無作為の決定

認定のプロセスに問題がないか

事実関係

  • ヒアリングによると、診断書等に疑義があった場合は、医師等へ照会するなどの話があり、認定基準に定めるプロセスを逸脱している事実は確認できなかった。

個別の認定が適正に行われているか

(※)は精神障害に係る部分です。

事実関係

  • 審査書類に、判断の理由が明確に記載されているとはいえず、丁寧さに欠けるものが見受けられる。
  • 理由付記文書も申請者にとって分かりにくい記載がある。
  • 認定医の審査の参考となるよう、等級案も含め、事前確認票が作成されているが、障害等級の目安と、診断書等の内容(病状の経過、具体的な日常生活状況等)をもとに総合的に認定する仕組みの中では、職員による等級認定案の必要性は高くない。
  • 令和6年度の不支給割合の上昇は、「障害等級の目安より下位等級に認定され不支給となっているケース」等が増えていることが寄与していると考えられる。(令和5年度44.7%→令和6年度75.3%)
  • 令和7年3月の報道を踏まえ、精神障害の新規裁定のうち、その時点で認定医の審査過程で不支給と見込まれた審査中の事案について、より丁寧な審査を行う観点から、障害年金センターに配置される常勤医師による確認を実施し、約1割が支給となった。

今後の対応策

  • 審査書類に丁寧に記載することの徹底
  • 認定事例の作成・考慮要素の徹底
  • 理由付記文書の改善
  • 職員による等級案の廃止(※)
  • 今後の全ての不支給事案について複数の認定医による審査
  • 過去の精神障害等の不支給等事案の点検

特に注目すべき点

組織的な指示や対応があったかどうかについて

理事長、センター長等の指示について

ヒアリングでは、障害年金センター長から

  • 認定の根拠を明確にすべきといった意図の指摘はあった
  • 認定医にきちんと説明できるよう精査すべきと言われた

といった旨の話はあったが、日本年金機構理事長や障害年金センター長を含め、特定の職員が、審査を厳しくすべきといった指示を行っていた等の事実は、ヒアリングでは確認できなかったとされています。

認定医に関する文書について

令和7年4月29日に報道された認定医に関する文書については、以下の事実が確確認された

認定医に関する文書の用途と位置づけ

ヒアリングでは、職員の異動等の際に、担当者間での引継ぎのために、障害年金センター内で使用していたとの話があった。また、当該文書に記載された内容は、実際に審査を担当する職員の申し送り事項、認定医が判定を行う際の事務的な応対方法をメモしたものであった。

そのメモには、認定医の氏名のみが記載されたものや、すでに辞任した認定医の情報が記載されているなど、さまざまな状態で保存されており、統一的に管理されたものではなかった。

ヒアリングにおいても、

  • 職員が担当する認定医は1名から3名程度であること
  • 日程上、最も早く対応が可能な認定医に依頼していること

から、認定医を選択する余地はほとんどなく、認定医への依頼の都度、その文書を活用することはない旨の話があった。

また、ヒアリングでは、内部及び外部障害では、同様の文書は存在しないとの話があった。

文書の記載内容について

文書の記載内容について、特に注目すべき点に「連絡事項」があり、そこには個々の認定医に関する内容も含め、以下のような記載があった。

  • 基本的にこちらの意向に沿って認定していただけますので、認定の方向性や程度、不支給理由に関しても事前にこちらであらかじめ決めておくのが望ましい。
  • 基本的に精神全般で認定可であり、厚年も可能。その他違法薬物等についても相談です。
  • コピペ診断書や不自然に重い診断書についても照会指示あり。
  • 傷病ごとに固めてみてもらっています。
  • ペットボトルのお茶を出しています。

以上を踏まえれば、認定医に関する文書については、組織的に認定をコントロールする意図をもって作成、使用された文書ではないと考えられるものの、認定の傾向に関することなど、一部に適切ではない記載内容も含まれていたといえる。

精神障害の新規裁定に係る分析・考察

個別の認定が適正に行われているかどうか

事前確認票等の記載内容について
  • 令和4年4月から導入された事前確認票は、職員が事前に必要な情報を整理することで、職員と認定医の間で、事実関係の確認等の手戻りが減ることなどの有効な点がある。
  • 職員が、認定医に伝達事項等があれば記載する「職員特記事項」欄において、例えば、実際に審査を担当する職員からのヒアリングでは、「障害等級の目安では2級とされていたが、カルテに症状は落ち着いていること、買い物等ができているとの記載があったほか、一般企業に一般雇用されているものの業務内容は単純作業であり、しばしば休むことを総合的に判断し、就労に制限がある状態として3級とした」等という、等級案に至った明確な理由が明確に聞き取れたものの、事前確認票等には「日常生活状況(就労状況)」などとだけ記載されているなど、単語や記号の列記にとどまっているものが見受けられた。
  • また、認定調書では、認定医が具体的な等級判定理由及び不支給、却下とした理由等を記入する「認定医からの障害の程度の評価・事務連絡等」欄において、例えば、単語や記号の列記だけが記載されているものも見受けられた。
  • こうした記載は、判断の理由を明確に残せているとは必ずしもいえず、特に判断が難しい事案において、「なぜそのような判断に至ったのか」、「どういう点で上位等級を検討する要素で、どういう点で下位等級を検討する要素なのか」といった明確な記載をしていく必要があると考えられる。
事前確認票の等級案について
  • 精神障害は、障害等級の目安と、診断書等の内容(原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等)をもとに総合的に認定する仕組みとなっています。
  • 事前確認票は、職員が等級案を記載する欄があり、等級案も含め、認定医のヒアリングでは、事前確認票は助かっているが、等級案を見て決めているわけではないといった旨の話があった。
  • これらをこれらのことを踏まえると、職員が等級案を記載する必要性は高くないと考えられる。

令和6年度の集計結果から

  • 上記のとおり、令和6年度の集計結果において、「目安より下位等級に認定され不支給となったケース」または「目安が2つの等級にまたがるものについて、下位等級に認定され不支給となっているケース」の割合が高かった(75.3%)ことが分かります。なお、そうしたケースの約9割は、職員の事前の等級案のとおりとなっていました。
  • この要因については、ヒアリングにおいて、「事前確認をするようになって、職員の業務の習熟度が上がった思う。」、「経験を積むと、診断書と病歴・就労状況等申立書が合わないことに気が付くようになる。」、「認定医からも、症状の軽い人の請求が増えている。」といった話もあったが、一概に特定することができなかった。
  • ガイドラインでは、「総合的に評価した結果、目安と異なる等級になることもあり得るが、その場合は、合理的かつ明確な理由をもって判定する。」、「目安が2級または3級など複数になる場合は、総合評価の段階で両方の等級に該当する可能性をふまえて、慎重に等級判定を行う。」とされています。

まとめ

今回、令和5年度と令和6年度の精神障害についての障害年金不支給割合が2倍になったという報道を受けて、厚生労働省及び日本年金機構が、調査し報告書を発表しました。精神障害の障害年金申請について絞ってまとめると、

  • 日本年金機構でもサンプル調査を行った結果、確かに令和5年度よりも令和6年度の方が非該当とされた割合が高く、精神障害については報道されたように約2倍非該当の割合が上昇していた。
  • 理事長やセンター長等が審査を厳しくすべきといった指示を行った事実は確認できなかったとされていますが、あくまでも内部での調査であるので、私にはこのことについての信ぴょう性に欠けると思います。
  • 令和4年4月から事前確認票というものが作られ、そこに職員による等級案が記載されていた。しかし、認定医はそれを見て、決めているわけではないという回答があった。とありますが、これにも信ぴょう性が欠けていると思います。
  • 以上のことを踏まえて、今後の対応策として、審査書類に丁寧に記載することの徹底、理由付記文書の改善、職員による等級案の廃止、今後の全ての不支給事案について、複数の認定医による審査などを行うとされています。

まずは、以上の改善案が本当に機能しているかについては、令和7年度が終わり次第、令和5年度と比べて不支給割合を早急に比較することが必要です。そして、等級認定についてはあくまでも、障害年金認定基準をもとに行われることが必要です。

「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00198.html

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