労働基準監督署による監査は、3つに分類することができます。
まず、定期的に事業所を選定して行われる「定期監査」といわれるものと、労働者あるいは家族、退職した職員からの申告により事実確認等が行われる「申告監査」と言われるもの、またいったん監査や指導をした先においてその後も継続して指導が守られているか否かを確認する「再監査」と言われるものがあります。
その中でも「定期監査」というものが代表的であり、多くの事業所が受ける労働基準監督署による監査はこの形態によるものです。
三重県の社労士が労働基準監督署による定期監査を解説します
定期監査は、毎年春頃に厚生労働省が定める労働基準行政の方針に基づいて行われ、この何年間は、長時間労働対策が大きな柱となっています。
また、時には建設業で労働災害が多発しているといったようなことであれば、建設業に対して集中的に監査を行うといったように業種を絞って行われる場合もあります。
労働基準監督署による監査の連絡
労働基準監督署による監査は、一般的には事前に文書が届き、指定日時を設定されたうえで必要書類を持参のうえ、管轄の労働基準監督署の会議室等に足を運ぶことになります。しかし、労働基準監督署からの指定日時は、通常の診療時間と重なることが多いことから、平日の午後の診療が休みの日にしてもらうとか、代理として社会保険労務士に対応してもらうといった方法を採る必要があります。
労働基準監督署の監督官の権限
医療機関の院長さんや事務長さんのなかには労働基準監督署の存在を軽視し、文書連絡を無視したり、職員に暴言を吐く方がまれにいます。しかし、労働基準監督署の職員は、法律により司法権限を有しているとされており、法律違反である旨の指導をしたにも関わらず無視を続けるなどの対応を取っていれば、労働基準監督署により悪質な事業所であるとみなされて、事業主が逮捕されることもありますので、注意が必要です。
労働基準監督署による指導の方法
労働基準監督署による指導は、基本的に労働関連法令に違反しているか否かを確認することであり、これはさまざまな方法によってなされることになります。多くの場合、あらかじめ指定された書類を元にヒアリングや資料確認によって問題点を炙り出されることになり、法律に違反する事項が見つかれば「是正勧告書」というものが交付されます。
また、法令違反ではないものの改善が望ましい事項、例えば年次有給休暇の取得率が低い等については「指導票」が交付されることになります。
そして、是正勧告書の交付を受けた場合には、一定の期日までにその事実を是正することが求められ、その期間においては是正した事実を証明するものを持参して確認を受けなければなりません。
是正勧告書とは
労働基準監督署による指導により、労基法および関連法令違反であると監督官に判断されれば、本来であれば罰則規定が適用されることになります。しかし、労働基準監督署というのは法令違反を取り締まることを主眼に置いて活動しているわけではなく、違反事項を事業主に認識させ、自主的に是正してもらうことをスタンスとしていますので、法令違反事項が発見されれば、まず「是正勧告書」によって指導を受けることになります。
これは、あくまでも是正命令ではなく是正勧告であるため、この勧告によって是正を義務付けられるものではありませんが、是正しようという意思が微塵たりとも感じられないものであれば、法令違反ということで事業主が逮捕されることもあるため、注意が必要です。
また、「是正勧告書」の交付を受けた場合は、一定の期日(おおむね1か月以内)に指摘を受けた事項について改善を行い、改善を証左する資料を添付して、「是正報告書」にその事実を記載して労働基準監督署に提出することになります。
ここで十分な改善がみられなかったり、あるいは継続的に確認が必要であると労働基準監督署が判断した場合には、「再監査」が行われ、改めて実態についての状況報告など定期的に各種資料を添付して実施していかなければなりません。
是正勧告の対応をしないとどうなるか
是正勧告書を受けると、指定期日までに自主的に是正することが求められます。この期日を守らず放置していれば、労働基準監督署から是正勧告の対応についての督促状が内容証明郵便などによって届くことがありますが、この督促状を無視するなどしていると、対応が悪質であるとみなされて、事業主が逮捕されるなど処罰される可能性があります。
労働基準監督署の指導を防止するための事前対策
労働基準監督署による指導内容や項目はおおよそ決まっていますので、例えば下記のチャックポイントで示す点についての整備をあらかじめしておけば、指導についても最小限に抑制させることができる場合もあります。
労務管理のチェックポイント
1.労働基準法関係
- 労働条件を書面で通知しているか?
- 労働者名簿を備えているか?
- 就業規則を作成しているか(従業員数10人以上の事業所の場合)?
- 就業規則は、絶対的記載事項が網羅されているか?
1.始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇および労働者を2組以上に分けて交代で就業させる場合において交替で就業させる場合においては、終業時転換に関する事項
2.賃金(臨時の賃金を除く)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切および支払いの時期並びに昇給に関する事項
- 就業規則は法改正に対応されているか?
2.賃金支払関係
- 割増賃金が適正な計算のもとで支払われているか?
- 割増賃金の計算においての割増率は正しいか?
- 賃金控除するものがある場合、賃金控除協定が締結されているか?
- 最低賃金法以上の賃金を支給しているか?
- 賃金台帳に労働日数、労働時間の記載があるか?
3.労働時間関係
- タイムカード等にて労働時間の管理を行っているか?
- 時間外労働について別途申請書を用いて運用している場合、タイムカードの計算における労働時間と大幅に乖離していることはないか?
- 時間外・休日労働に関する協定書(36協定)は、事業所ごとに締結・提出がされているか?
- 時間外・休日労働に関する協定書(36協定)に定めた時間を超過して労働させていることはないか?
4.安全衛生関係
- 正職員および社会保険加入者のパート職員に対して、年1回以上定期健康診断を受診させているか?
- 夜勤を行う職員に対して、6か月に1回健康診断を受診させているか?
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