各種ハラスメントへの対応を事前に就業規則で定めておきましょう。
「ハラスメント」とは何か?
ハラスメントとは、相手に迷惑をかけること、すなわち「嫌がらせ」のことです。
したがって、さまざまなハラスメントがあり得ますが、職場で起きるハラスメントは、大きく「セクシャル・ハラスメント」「パワー・ハラスメント」「モラル・ハラスメント」の3つに分類できます。
3種類のハラスメント
セクシャル・ハラスメント(セクハラ)
職場において行われる、性的な言動や行為による嫌がらせ。男性から女性に行われることが多いが、女性から男性におこなわれることもある
パワー・ハラスメント(パワハラ)
職権を背景にした嫌がらせ。職権を背景に人格を侵害する言動を繰り返し行い、労働者に過度な精神的負担を与え、働く環境を悪化させる行為
モラル・ハラスメント(モラハラ)
精神的な苦痛全般。言動や身ぶり、態度などによって他人の人権・尊厳を侵害する、精神的な暴力・虐待のこと
これらは、全く独立したものではなく、セクシャル・ハラスメントとパワー・ハラスメントの両方にまたがるケースもあります。また、セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントの多くは、モラル・ハラスメントでもあります。
こうした各種のハラスメントに対して対策を立てることは、クリニックの秩序の維持の観点からも非常に重要です。
セクハラ防止はクリニックの法的義務
職場のセクシャル・ハラスメントを分類すると、大きく「対価型」と「環境型」に分けられます。
「対価型セクシャル・ハラスメント」
職員が、意に反する性的な言動に対して示した拒否や抵抗等によって、さまざまな不利益を受けることです。具体的には、解雇、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などがあります。
こちらは、一般的にイメージされやすいセクハラです。一例をあげれば、食事などの誘いに応じないからと、人事評価で不利な扱いをする場合などがあてはまります。
「環境型セクシャル・ハラスメント」
職員の意に反する性的な言動により、就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、職員が就業する上で看過できない支障が生じることです。
環境型のセクハラでは、セクハラをしている側は相手に迷惑をかけていないと思っていることも多いです。
例えば、セクシーすぎる写真を職場のパソコンの壁紙にし、他の職員から苦情が出る場合などが当てはまります。
これらのセクシャル・ハラスメントについては、男女雇用機会均等法によって次のように定義づけられています。
男女雇用機会均等法第11条
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること
同法では、クリニックは「職員からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされています。
つまり、セクハラ防止は、男女雇用機会均等法上の義務なのです。
法的義務なので、クリニックは必ず、就業規則に次のようなことを定めなければなりません。
【条文例】
相手方の望まない性的言動等により、他の職員に不利益を与えたり、就業環境を害すると判断される行為をしたりしないこと
しかし、就業規則にこのように定めてあるだけでは、クリニックとしてセクハラ対策を十分にとったとはいえません。
この点については、厚生労働省が、男女雇用機会均等法に基づくセクハラ指針で、クリニックがとる措置を次のように示しています。
- 事業主の方針の明確化、および周知・啓発
- 相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるセクシャル・ハラスメントにかかわる事後の迅速かつ適切な対応
- 1~3までの措置に併せて実施すべき措置
以上を踏まえると、クリニックは防止規定を整備し、かつ、対応体制を整える必要があるということになります。
具体的には、就業規則にセクハラ禁止の規定を入れる一方で、セクハラ予防、セクハラに遭った場合の相談先、セクハラがあった場合のクリニックの対応などを定めた別規定を作り、体制を整えることが必要です。
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今後のパワハラへの対応も必要です
セクハラと同じく、職場におけるハラスメント(嫌がらせ行為)として、最近はパワーハラスメント、略してパワハラの存在が問題視されています。
パワハラとは、職権を背景に人格を侵害する言動を繰り返して行い、職員に過度な精神的負荷を与え、働く環境を悪化させる行為をいいます。
セクハラとは違い、パワハラはまだ法的な定義が明確ではないため、対処が難しい面があります。
しかし、従業員の自殺の原因として、所属長などのパワハラによるうつ病が認められて、労災認定される裁判例なども出始めており、パワハラも労務問題の一環として捉えられるようになっています。
放置しておくと大きな問題になりかねませんので、規模の大小を問わず、クリニック側においても早めの対応が必要です。
ちなみに、上記裁判例では、裁判所は次のような判断を示しています。
一般に、企業等の労働者が、上司との間で意見の相違等によりあつれきを生じる場合があることは、組織体である企業等において避けがたいものである。しかしながら、そのトラブルの内容が、通常予定されるような範疇を超えるものである場合には、従業員に精神障害を発生させる程度に荷重があると評価される(日研化学事件・東京地裁・平成19年)
基本的には、パワハラ対策は上述したセクハラ対策に準じれば良いと思います。実務では、次のような措置をとるのがよいでしょう。
- 就業規則にパワハラ防止規定を置くとともに、パワハラがあってはならない旨や、パワハラの定義、パワハラ加害者に対する処分などを明確にする
- 相談窓口を設置し、相談の内容や状況に応じて適切に対応できるようにする
- 実際にパワハラの相談があった場合に、迅速に対応できる体制を整える。
就業規則に条文を加えるなら次のようなものになります。
【条文例】
職権等を背景に人格を侵害する言動を繰り返し行い、他の職員に過度な精神的負荷を与え、働く環境を悪化させる行為を行わないこと。
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