【三重県の社労士が解説】クリニックの就業規則 休日と休暇

目次

休日は週に何日与えなければならないか

労働基準法では、休日について次のように定めています。

労働基準法第35条

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。

2.前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

つまり、休日は「毎週1日以上、または4週4日以上」与えなくてはならないということです。これが、「休日の原則」です。

ちなみに、この「1週間」をいつからいつまでにするかはクリニックの自由ですが、就業規則などで特定しておかなくてはなりません。特定がない場合は、日曜日から土曜日までの「暦週」となります。

また、「4週間」についても、就業規則に起算日を定めておかなくてはなりません。

上述のとおり、週1日または4週4日の休日が、労働基準法が定める最低ラインです。ということは、「週休1日制」にしてもよいということかと考える院長先生も多いでしょうが、ことはそう単純ではありません。

同法では一方で、週の労働時間を40時間と定めています。1日の労働時間が8時間の場合、週休2日は休日がないと、労働基準法違反となります。

法定の労働時間で仕事をさせているクリニックであれば、実質的には「週休2日制」が必要です(変則的な労働時間の場合はこの限りではありません)。

「法定」の休日と「法定外」の休日があります

前述のとおり、法が義務付けている休日は「毎週1日以上または4週4日以上」です。これを「法定休日」といいます。

法定休日に仕事をさせた場合は休日労働になりますから、当然、割増賃金を支払わなくてはなりません。

これに対して、法定休日以外の休日を「法定外休日(所定休日)」といいます。

一般的な週休2日制の場合でいえば、2日ある休日のうち、どちらかは「法定休日」、どちらかは「法定外休日」となるわけです。

なお、労働基準法は休日の特定までは義務付けていませんから、法定休日と法定外休日の決め方については、次のような扱いが考えられます。

【例1】

  • 休日は毎週木・日とする
  • 日曜日を法定休日とする(したがって日曜日に仕事をした場合は3割5分の割増賃金)

【例2】

  • 休日は毎週木・日とするが、法定休日は特定しない
  • 木・日とも出勤し、1週間休日がなかった場合は、休日出勤日の最初または最後のどちらか一方を法定休日労働とする(どちらにするかは就業規則の定めによる)

また、国民の祝日や年末年始などをどうするかは、クリニックの自由です。

休日は「暦日」が原則、特定は不要です

休日は、0:00~24:00の「暦日」が原則です。

ただし、入院施設のある病院で交替制勤務シフトなどを採用していて、勤務が日をまたぐ場合は、継続24時間で休日1日と数えてもかまいません。ただ、この場合は就業規則などで、交替制勤務のことをきちんと定める必要があります。

また、週シフト制などを採用していて、休日が毎週同じ曜日にとれないケースもあります。このような場合、「休日は週2日とする」というような休日を特定しない定め方にしても、法律違反ではありません。繰り返しになりますが、労働基準法は休日の特定までは求めてないからです。

しかし、厚生労働省の通達には「特定することが法の趣旨に沿う」とあります。したがって、「休日は毎週木曜日、日曜日とする」というように、できれば日を特定するほうが望ましいでしょう。

休日に働いた職員に代わりの休みをとらせるには

休日に働いたときに、代わりの休みをとってもらう「代休」を認めているクリニックは多いでしょう。一方、「休日振替」という制度もあり、両者が混同されていることも少なくありません。

両者について、その違いを理解しておきましょう

「休日振替」の場合

休日振替とは、休日と定められている日を勤務日とし、別の日を休日とすることです。

いわゆる「代休」とは異なり、事前に振り替える休日と、代わりに休日とする日を指定することが原則となります。

休日を振り替えた場合、もともとの休日は勤務日となり、「休日出勤」とはなりません。したがって、割増賃金を支払う必要はありません。ここが「代休」とは異なる点です。

休日振替を実施する場合、就業規則に休日の振り替えをすることがある旨を定めておく必要があります。

この際、休日振替すべき具体的事由と、振り返るべき日を具体的に規定するほうが望ましいとされていますが、現実には、あらかじめこのようなことを定めるのは難しいので、そこまで記述する必要はありません。「業務の都合により休日を振り替えることがある」という定め方で問題ありません。

注意点としては、休日振替を実施した場合でも「1週1日または4週4日」の法定休日は確保する必要があることです。頻繁に休日振替を行っていると、法定休日を確保できなくなることがあるので、気を付けてください。

また、前述のとおり、「4週4休制」の場合は起算日を定めておかなくてはなりません。

「代休」の場合

いわゆる「代休」とは、休日出勤した場合の、代わりの休みのことです。

休日振替と似ていますが、休日振替の場合はもともと休日だった日が勤務日に転換されるので、その日の勤務は休日労働になりません。

これに対して代休の場合は、休日だった日はあくまでも「休日」です。したがって、この日に勤務すれば、それは休日労働となり、割増賃金の対象になります。

また、代休の与え方は自由に定められます。

クリニックが強制的に与える(休ませる)方法と、本人の請求による方法の大きく2パターンに分けられるでしょう。

また、休日出勤時間が一定時間以上になったら与える、という方法もあります。

ただし、休日に関することは絶対的必要記載事項ですから、代休制度を設けるときには、就業規則へも必ず定めを記載しなくてはなりません。

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年次有給休暇の日数は、どう計算すればいいのか

次は、職員さんに与える年次有給休暇について見ていきます。まずは、付与日数の計算からです。

有給休暇の原則

年次有給休暇は、6か月以上継続勤務し、その期間の出勤率が8割以上の職員さんに対して10日間付与します。

6か月経過後は1年ごとに、その期間の出勤率が8割以上の場合、下の図のように付与します。

年休付与表

勤続期間付与日数
6か月10日
1年6か月11日
2年6か月12日
3年6か月14日
4年6か月16日
5年6か月18日
6年6か月20日

※ただし、1週間の所定労働日が4日以下で、所定労働時間が30時間未満の場合は「比例付与」にすることができます。

その期間(基準日までの1年間)の出勤率が8割未満の場合は、付与しなくてもかまいません。ただし、その次の期間の出勤率が8割以上に戻れば、年次有給休暇の付与も再開します。

具体的には、次の例のとおりです。上の年休付与表と見比べて、どのタイミングで、何日の年次有給休暇を与えなければならないのかを確認してください。

年休付与例
  • 勤続1年6か月 それ以前1年間の出勤率9割 → 11日付与
  • 勤続2年6か月 それ以前1年間の出勤率7割 → 付与なし
  • 勤続3年6か月 それ以前1年間の出勤率8割 → 14日付与

「出勤率」の計算方法は

付与日数の判断基準となる「出勤率」は、次の計算式で算出します。

  • 出勤率 = 就労した日数 ÷ 労働日(就業日)

上記の「労働日」とは所定労働日数を指し、算定期間(6か月または1年)の暦日数から、所定休日を除いたものです。

したがって、出勤率は、欠勤などを除いた現実に出勤した日をクリニックの所定労働日で割れば出るのですが、いくつか考慮しなくてはならないポイントがあります。

まず、前述のとおり、休日は労働日ではないので分母には入れません。これは当然ですが、休日出勤をしても、分子、つまり就労日数には入れない点に注意してください。

休日出勤日は労働日とは考えませんから、休日出勤をしても、分母・分子ともに入れないのです。

ただし、年次有給休暇で休んだ日は、もともとは労働日なので分母に入れます。また、出勤とみなすので、分子にも入れます。これらの関係をまとめると、次のようになります。

分母・分子両方に入れる

  • 年次有給休暇取得日
  • 業務災害による休業日
  • 産前産後休業日
  • 育児・介護休業日

分母・分子両方から除外

  • 休日労働
  • ストライキ
  • 休職期間
  • 使用者の責に帰すべき休業日

任意(クリニックの定めるところによる)

  • 通勤災害による休業日
  • クリニック独自の特別休暇
  • 生理休暇

年休を付与する基準日はいつか

前述のとおり、年次有給休暇は初回は6か月、以後は1年ごとに付与していきます。このとき、付与を行う日をどこから数えて決めるのかについては、次の2つのパターンがあります。

  1. 入社日を起点に付与
  2. クリニック一斉の基準日に付与

1.入社日基準は、職員ごとに付与日が異なるので、事務的に煩雑です。その点では、2.の基準日方式の方が実務的に運用しやすいのですが、法定基準を下回らないように注意しなくてはなりません。

たとえば、基準日を10月1日に設定し、基準日時点で勤続6か月以上の職員さんに年次有給休暇を付与するとした場合で考えてみましょう。

【当年の9月1日入社者】

当年10月1日は付与なし、翌年10月1日で10日付与

この場合、翌年3月1日の時点で勤続6か月となりますから、10月1日まで年次有給休暇を付与しないとなると法律違反になってしまうのです。

こうした事態を避けるためには、当年10月1日時点で、10日分を前倒しで付与することにするのが一般的です。

また、前年の10月1日から当年3月31日までの間に入社した者については、10月1日がくる前に6か月経過してしまいますから、勤続6か月の時点で10日付与し、基準日には11日付与するようにします。

これを図表にまとめると、以下のようになります。

基準日方式の場合の年休付与表の例

〇付与基準日:10月1日の場合

【10月1日の勤続】

以下付与日数
6か月10日
6か月1年6か月11日
1年6か月2年6か月12日
2年6か月3年6か月14日
3年6か月4年6か月16日
4年6か月5年6か月18日
5年6か月20日

※ただし、9月30日までに勤続6か月となる場合は、勤続6か月の時点で10日付与します。

年次有給休暇の有効期間は2年

なお、年次有給休暇の有効期間は、法律で2年とされています。

年次有給休暇の計画的付与もできる

年次有給休暇をいつ、何日取得するかは職員さんの自由です。

クリニックが一方的に時季を指定したり、許可制にすることはできません。

ただし、職員さんの過半数で組織する労働組合または職員さんの過半数代表者との労使協定で、有給休暇を与える時季に関する定めをした場合は、年次有給休暇のうち、5日を超える部分については、その定めに従って付与することができます。

これを「計画的付与」といいます。

計画的付与には、次のようにさまざまな方法が考えられます。

労使で話し合い、自院にマッチしたやり方を採用するのがいいでしょう。

  • クリニック全体で一斉に休み
  • 年休計画表などで個々の職員さんが交代で休む

申請された年次有給休暇の時期をずらすには

年次有給休暇の利用申請は断れません

年次有給休暇は、職員さんが請求してきたら与えなくてはなりません。年休は職員さんの権利として認められているものですから、クリニックが許可するという性格のものではありません。

「許可しない」ことは不当な権利の侵害となります。もちろん、年休の取得を理由に、人事評価などでの不利益な取り扱いをするのも厳禁です。

院長先生のなかには、年次有給休暇の取得もクリニックの許可制だと勘違いしている方が時々いらっしゃいますが、この点をまずは再確認しましょう。

日をずらすことも可能ですが…

では、職員さんが請求するままに年次有給休暇を使わせなくてはならないのかというと、クリニックはそこまで強制されているわけではありません。

職員さんの年次有給休暇の申請に対して、「時季変更権」を行使することは可能です。

時季変更権とは、年次有給休暇を取得されると、業務の正常な運営が妨げられる場合に、職員さんが請求した時季をほかの時季に変更することができるというものです。

では、この場合の「事業の正常な運営を妨げる場合」とは何を指すのでしょうか?

この点は、通達により「事業の正常な運営を妨げる場合とは、個別的、具体的に客観的に判断されるべきものであると共に、事由消滅後できる限り速やかに休暇を与えなければならない」とされています。

また、判例・裁判例でも、次のように示されています。

その企業の規模、年休請求権者の職場における配置、その担当する業務の内容・性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、時季を同じくして年休を請求する者の人数等、諸般の事情を考慮して制度の趣旨に反しないように合理的に決すべきものである(東亜紡織事件・大阪地裁・昭和33年)

法の趣旨は、使用者に対し、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請しているものとみることができる。使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできない(電電横手電話中継所事件・最高裁・昭和62年)

要するに、「この忙しいのに有給なんてとらないで欲しい」という程度の理由では、時季変更権の行使はできないということです。

年次有給休暇取得の際に事前申請をさせるには

事前申請の義務付けは可能

職員さんから年次有給休暇の申請を受けた場合、原則、受け付けなければなりませんが、取得する前に事前申請を行うように義務付けることは可能です。

当日の朝、急に年次有給休暇の取得を申請することを許していては、クリニックは時季変更権を行使するかどうか検討できなくなりますし、実務にも支障をきたします。したがって、年次有給休暇の取得の際には一定期日前の申請を義務付け、それを怠った場合は欠勤扱いとすることが妥当でしょう。

理由による制限をしてはいけません

なお、申請用紙には、年休取得の理由を書く欄を設けることがありますが、この理由について、クリニック側がとやかくいうことは許されませんので気を付けてください。また、理由の記入は強制ではなく、任意であることも明示した方が良いでしょう。

法的には、年次有給休暇の取得に理由は不要とされています。利用目的によって、年次有給休暇の取得を制限することは法律違反なのです。

それなのに、なぜ多くのクリニックで年休取得の理由を書かせるかというと、複数の職員さんから同時に年次有給休暇取得の申請がされたときなどに、時季変更権を行使するかどうか判断する必要があるからです。

この判断にあたっては、それぞれの職員さんの年休の取得目的も判断材料になりますから、こうした場合に備えて、取得目的を聴取すること自体は違法ではないのです(強制すると違法の疑いがあります)。

ちなみに、理由の聴取を行わなくても、それは各クリニックの判断ですのでまったく問題はありません。

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