【三重県の社労士が解説】クリニックの就業規則作成のポイント

就業規則は、職場のルールをまとめたものであり、ルールを画一的に定めることによって、適正な労務管理を行うことができるといったメリットがあるものの、残念ながら多くの医療機関では就業規則の重要性を認識することなく、労務管理が行われているのが実情です。

目次

就業規則はクリニックのルールブック

就業規則について詳しく見ていく前に、まずは「そもそも就業規則とは何なのか」を説明いたします。

先ほども述べましたが、就業規則は、クリニックの労働条件や就業上のルールを定めたルール集です。

また、労働基準法によって、使用する職員(パート職員さんも含めます)が10人以上になったら必ず作成し、管轄の労働基準監督署へ届け出なければならないと定められています。

「就業規則」という名称を付けていなくても、労働条件や就業上のルールを定めた書類等があれば、法律上、それが就業規則になります。

また、「賃金規程」「退職金規程」などと、内容によって分かれていても、それらが集まって就業規則となります。

一方、「○○規程」という名称の書類等が存在していても、労働条件や就業上のルールを定めたものでなければ、それは法律上の就業規則にはなりません。例えば、「職務権限規程」や「会議運営規程」のようなものは、労働条件や就業上のルールを定めたものではないので、就業規則には該当しません。

また、「事務取扱要領」のようなマニュアル的なものも、該当しないと考えていいでしょう。

法律上の義務だけで就業規則は作るものではありません

就業規則は、なぜ作成するのでしょうか?

「労働基準法に定められているから」。確かにそのとおりです。先ほども述べましたが、常時10人以上の職員を使用する使用者には、労働基準法により就業規則の作成が義務付けられています。つまり、就業規則の作成は、人を使ってクリニックを運営していく上での法的義務となっています。

また、助成金の申請などの際には、就業規則の添付が義務付けられることもあります。そういう意味でも、就業規則がないと何かと不都合なことが多いです。

では、就業規則を法的義務という位置づけだけで捉えてもいいのでしょうか?もし、そうだとすると、就業規則は、強制されて仕方なく作成するものということになります。

しかし、就業規則はそれだけにとどまるものでは本来ありません。実は、この就業規則の位置づけをどう考えるかによって、クリニックの人材マネジメント、つまり人材の活用や処遇のあり方が大きく異なってくるのです。

就業規則を使いこなすことで、クリニックが常にさらされているさまざまなリスクへの守りを固めることもできますし、職員の意欲づけなどの効果を狙うこともできます。法的義務を超えた就業規則の位置づけをしっかり考えることが、今後は、クリニックの業績に少なからず影響を与えるようになるでしょう。

新たに10人以上の職員を雇うことになり、これから就業規則を作成する院長さんも、すでにある就業規則を時代の変化に合わせて見直したい院長さんも、まずは、この点を念頭に置いて、就業規則に向き合ってください。

就業規則には書かなければならないことが法律で決まっています

では、就業規則を作成したり、見直しを行う際の手順について解説していきます。

就業規則を新たに作成するとき、あるいは、すでにある就業規則を見直すときに、記載すべき事柄は労働基準法第89条で定められています。まずはこれを確認します。

就業規則に記載すべき事柄一覧

絶対的必要記載事項1.始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務の就業時転換に関する事項
2.賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期、ならびに昇給に関する事項
3.退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的必要記載事項1.退職手当の適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法、ならびに退職手当の支払の時期に関する事項
2.臨時の賃金等(退職手当を除く)、および最低賃金額に関する事項
3.労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
4.安全衛生に関する事項
5.職業訓練に関する事項
6.災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
7.表彰・制裁の種類および程度に関する事項
8.その他、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
任意的記載事項その他、各社で自由に定めても良い事項、総則など
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就業規則の記載事項には何があるか

上の図で分かるように、労働基準法が定める就業規則の記載事項には、次の3種類があります。

  1. 絶対的必要記載事項
  2. 相対的必要記載事項
  3. 任意的記載事項

1の絶対的必要記載事項は、その名のとおり、就業規則に必ず記載しなくてはならない事項です。

始業、終業などの就業ルールに関する基礎的な事柄と、賃金や退職などの労働条件に関する基礎的な事柄が該当します。これらについては、法律で必ず記載しなければならないとされています。

一方、2の相対的必要記載事項は、定めがあれば記載しなければならない事項です。つまり、クリニックが制度を設けた場合には、必ず記載しなくてはならないということです。

逆に言うと、制度を設けない場合には、記載しなくてもかまいません。

例えば、退職に関する事項は絶対的必要記載事項ですが、退職金に関する事項は相対的必要記載事項です。人を雇っていれば、退職という事象は必ず発生します。そのため、絶対的必要記載事項となっています。しかし、退職金を支払うかどうかはクリニックの自由ですから、退職金を支払わないのであれば、就業規則にそのことを記載する必要はありません。

ただし、退職金制度を設けるのであれば、当然、就業規則にも記載しなくてはなりませんから、相対的必要記載事項とされているのです。

3の任意的記載事項は、記載するかどうかは、完全にクリニックに任されている事項です。例えば、就業規則の目的を記した総則などが該当します。

就業規則の作成や見直しにあたっては、それぞれの記載事項がこの3種類のどれに該当するか、また、絶対的必要記載事項や相対的必要記載事項に漏れはないかを、常に念頭に置いて進める必要があります。

就業規則の記載事項にはクリニックも拘束されます

就業規則はクリニックが定めるものですが、いったん作成し周知したらクリニックもそれに拘束されます。

当然のことを書いているようですが、意外とこの点を理解していない院長さんが多いです。

繰り返しになりますが、就業規則に書かれていることは、クリニックと職員の労働契約の内容となります。

そして、契約である以上、当事者の片方が一方的に契約に反したことを行ってはなりません。

例えば、就業規則に始業9:00、終業19:00と定めてあったら。本来はどんなに業務が多忙であっても、19:00を過ぎて業務をさせてはなりません。これを可能にするためには、別途、「時間外労働・休日労働に関する協定」(36協定)を締結し、管轄労働基準監督署に届出を行い、かつ就業規則に残業に関する記載をしなくてはなりません。

記載されていないことは原則できません

またクリニックは、就業規則に記載されていないことは原則としてできません。この点は、絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項どちらの場合も同様です。

例えば、就業規則に懲戒解雇についての規定を載せていなかったら、たとえ職員の不始末でクリニックの信用に大きな損害を受けたような場合でも、懲戒解雇にすることはできないのです。

どこまで書くかが、院長さんの腕の見せどころ

ただし、だからと言って就業規則に何でも事細かに記載すればいいというものではありません。就業規則に詳しく記述しすぎると、クリニックの手足を縛ることになってしまいます。

しかし、その一方で就業規則は職員に対するクリニックの説明責任を果たすという機能も持っています。

記載があまりに抽象すぎると、職員が就業規則を見ても、クリニックの制度がさっぱり分からない、ということになり説明責任を果たしたことにはなりません。

この両方の切り口から、不足なく、かつ書き過ぎず、就業規則をどう記載するかが院長さんの腕の見せどころということになります。

就業規則の作成は社労士に相談を

就業規則の作成は、労務のプロである社労士にご相談ください。

当事務所では、クリニック特有の特徴である

  • 女性が多い
  • 有資格者などの専門職が多い
  • 昼休憩が長く拘束時間が長くなる
  • 労働時間が患者さん次第で管理しにくい

などやそれに加えて、スタッフが働く時間、スタッフの服務規律などを十分考慮した、そして、それぞれのクリニックの実情に応じた就業規則を作成させていただきます。

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三重労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/home.html

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