トラックドライバーの労働条件の改善を図るため、労働省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、「改善基準告示」という)が策定されています。
改善基準告示では、拘束時間と休息期間の関係、拘束時間の限度(休息期間の確保)、運転時間の限度、時間外労働および休日労働の限度に関する理解が特に重要です。
拘束時間と休息期間の関係
改善基準告示によると、拘束時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間(作業時間と手待ち時間)と休憩時間(仮眠時間を含む)をいいます。
手待ち時間とは、荷の積込みのための待機時間などをいい、一見何もしていないように見えても、休憩時間ではなく労働時間になります。仮眠時間を含め、休憩時間は労働時間ではありませんが、拘束時間には含まれます。
一方、休息期間とは、拘束時間から次の拘束時間までの自由時間をいいます。すなはち、休息期間は、勤務と次の勤務との間の時間で、睡眠時間を含むドライバーの生活時間としてまったく自由な時間をいいます。
拘束時間以外は休息期間となるので、拘束時間と休息時間との和は、常に24時間となります。そして、1日の拘束時間を計算する場合は、始業時刻から起算して24時間が対象となります。
改善基準告示が改正されました
働き方改革にともない、時間外労働の上限規制960時間がトラック運送業についても適用され、同時に改善基準告示の改正も行われました。
主な改正項目は次の4点です。
- 拘束時間
- 休息期間
- 運転時間
- 時間外労働や休日労働
かねてからトラックドライバーの処遇改善については、トラック運送事業者のみならず荷主の意識改革が進まなければ、難しいことは指摘されています。
改正後の改善基準告示の概要
1日の拘束時間
原則 | 13時間以内 上限15時間以内 ※14時間を超える回数は週2回までとなるよう努める(努力義務) |
例外 | 1週間の運行がすべて長距離運送かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場合は当該1週間について2回まで16時間以内可 ※14時間を超える回数は週2回までとなるよう努める(努力義務) |
1か月の拘束時間
原則 | 284時間以内 |
例外 | 労使協定がある場合、1年のうち6か月までは1年間についての拘束時間が3,400時間を超えない範囲内で月310時間まで延長可 ※1か月の拘束時間が284時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める(努力義務) |
1日の休息期間
原則 | 継続9時間以上 ※継続11時間以上与えるように努める(努力義務) |
例外 | 1週間の運行がすべて長距離運送かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場合、当該1週間について2回まで継続8時間以上にできる。 ただし、この場合は一の運行終了後に継続12時間以上の休息を与える |
分割休息
原則 | 1回の休息期間は連続3時間以上、かつ合計10時間以上 1か月程度における全勤務回数の2分の1が限度 |
例外 | 3分割する場合は連続3時間以上、かつ合計12時間以上 1か月程度における全勤務回数の2分の1が限度 休息期間が3分割される日が連続しないように努める(努力義務) |
運転時間
2日平均で1日あたり9時間が限度 2週間平均で1週あたり44時間が限度 |
連続運転時間
原則 | 4時間以内 |
例外 | サービスエリア、パーキングエリア等に駐停車できない場合、4時間30分まで延長可 |
連続運転の中断
4時間経過するまでに原則として1回概ね連続10分以上、合計30分以上の休憩が必要 ※中断は休憩でなければならない ※10分未満の中断が3回以上連続しないこと |
フェリー乗船時の特例
フェリー乗船中 | 原則として休息期間扱い 乗船中の休息期間は与えるべき休息期間から差し引くことができる |
フェリー下船後の休息期間 | 減算後の休息期間は、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの時間の2分の1を下回ってはならない |
フェリー下船後の勤務開始 | フェリー乗船時間が8時間を超える場合、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務開始とする |
隔日勤務の特例
原則 | 拘束時間は2暦日で21時間。2週間の総拘束時間は126時間まで 勤務終了後は継続20時間以上の休息期間が必要 |
例外 | 夜間4時間以上仮眠を与えれば2週間で3回まで24時間可 この場合でも2週間の総拘束時間は126時間まで |
2人乗車の特例
原則 | 原則として車両に身体を伸ばして休息する設備があれば最大20時間まで延長可、休息期間は4時間まで短縮可 |
例外 | 当該設備が次のいずれにも該当する車両内ベッド等であるときは、拘束時間を24時間まで延長可 車両内ベッド等で8時間以上の仮眠時間を与える場合は、拘束時間を28時間まで延長可。この場合、一の運行終了後、継続11時間以上の休息期間を与える 車両内ベッド等とは下記のいずれも満たす設備をいう (ア)長さ198㎝以上かつ、幅80㎝以上の連続した平面であること (イ)クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること |
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改善基準告示の対象者
改善基準告示の対象者は、道路を走る4輪以上の自動車の運転者で、それによって給与を受け取っている労働者です。
したがって、バイク便などの2輪車の運転者は対象となりません。対象となる運転者は、「主として運転の業務に従事する者」と定められているため、事務仕事をしていてたまに配達の仕事をする方は対象外となります。
また、道路を走らず、工事現場内だけでダンプカーを運転する労働者なども対象外です。
注意すべき点は、事業用貨物自動車、いわゆる緑ナンバー車両の運転者だけでなく自家用自動車である白ナンバー車両を運転し、給与をもらっている労働者も対象となるという点です。
自社の貨物を運ぶ場合は、白ナンバー車両でよいため、一般貨物自動車運送事業許可のあるトラック運送事業者に当てはまりませんが、改善基準告示の適用は受けることになります。
白ナンバーだから運転者の拘束時間を気にせず長時間労働させてよいということではありません。
なお、社長を含めた会社の役員は労働基準法上の労働者に当たらないため適用除外となります。
適用除外
改善基準告示は平成9年の改正で、以下に該当する場合は改善基準告示の適用除外とすることが定められました。
緊急輸送
震災などで公安委員会から緊急援助の認定を受けた場合は、改善基準告示の適用除外となります。緊急輸送の認定を受けた場合は、改善基準告示に基づく運転時間や拘束時間についての縛りは全く受けません。
ただし、緊急輸送だからといって、運転者の健康や輸送の安全を無視した運行が許されるわけではないので注意しましょう。
危険物輸送
火薬、高圧ガスなどの危険物輸送で、届出と運搬計画が必要なものは改善基準告示の適用除外となります。
なぜなら、これらの貨物は関連法令で安全運転も含めてその運搬方法が制限されているからです。ただし、頻繁に行われる石油タンクローリーなどによる危険物輸送は改善基準告示の適用を受けます。
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三重労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/home.html
三重県トラック協会 https://santokyo.or.jp/
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