【三重県の社労士が解説】トラック運送業の労働時間の基本法令

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トラックドライバーの労働時間法令

就業時間、休憩、休日および休暇関係の事項は、いずれも就業規則に「必ず記載しなければならない事項」(絶対的必要記載事項)です。これらは当然、労働基準法(以下、「労基法」という)に準拠して、各事業の実態や特殊性に応じて具体的な規定を設ける必要があります。

さらに、トラック運送会社のドライバーの労働時間等については、厚生労働省告示の「自動車運転者の労働時間の改善のための基準」(以下、改善基準告示」という)によることとされています。

しかし、法令と現実の乖離があまりに大きすぎて、労基法の就業時間等に関する規定や改善基準の重要ポイントを正確に理解していない経営者や運行管理者は、決して少なくありません。

法定労働時間とは

労働時間の定義に関しては、その時間が労働時間であるかどうかは、当事者の約定にかかわらず、労基法の観点から客観的に判断するとする立場が、おおむね判例の立場となっています。

これを、客観説といいます。実務上も、労働者が指揮命令の下で就労していたかどうかで、労働時間を算定します。

原則的労働時間は、1週40時間という原則(総枠)を掲げたうえで、各日における労働時間の配分単位として上限8時間を掲げる仕組みとなっています。

原則的労働時間の例外として、週40時間の原則に合致しているかどうかを、一定の労働時間算定期間(変形)の中で判断していこうという仕組みを、変形労働時間制と言います。

変形労働時間制には、1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制、フレックスタイム制があります。

この変形労働時間制では、厳格に要求されるのは週40時間の原則であり、1日8時間の原則は緩和されています。たとえば、1年単位の変形労働時間制と1週間単位の変形労働時間制では、1日あたりの労働時間は10時間まで緩和されています。

1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制では、1日あたりの上限は設けられていません。

タクシー業やホテル業で多い16時間勤務や24時間勤務は、1か月単位の変形労働時間制では可能です。実際、タクシー業ではほとんどの会社が1か月単位の変形労働時間制を導入しています。

法定労働時間(労基法第32条)

第1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

第2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

(注) ・休憩時間=労働から離れることを保証された時間(労働時間には含まれない)。

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時間外および休日労働とは

法定労働時間(労基法第32条)の例外として、時間外および休日の労働(労基法36条)があります。

労基法36条は、使用者が過半数労働組合または過半数代表者との間で労使協定(これを、36協定といいます)を締結し、管轄の労働基準監督署に届け出れば、労働時間および休日の規定にかかわらず労働者を時間外および休日に労働させることができるとしています。

36協定は管轄の労働基準監督署に届け出なければ効力は発生しません。

労働時間延長や休日労働の延長を適正なものとするため、労働時間の延長の限度等を、厚生労働大臣が基準として定めることを規定しています。これを、延長時間の限度基準といいます。

原則的労働時間の特例

原則的労働時間の特例として、みなし労働時間制(労働時間把握の例外)と管理・監督者(労働時間の適用除外)があります。

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、労働時間の把握が困難な場合に、労働時間の把握を行わずに労働時間を一定の時間数であるとみなしてしまう制度のことをいいます。

みなし労働時間制には、①事業場外労働みなし労働時間制、②専門業務型裁量労働制、③企画業務型裁量労働制があります。みなし労働時間制の特徴は、対象労働者が使用者の直接の指揮命令下にないということです。

確かにトラックドライバーの業務は事業場外においておこわなわれるものですが、通常は走行距離、運転日報等からも労働時間を算定できるものであり、改善基準告示により、労基法第38条の2の事業場外労働には該当しないとされています。

みなし労働時間制

(1)事業場外労働みなし労働時間制

【例】外勤の営業社員等

【要件】

  1. 事業場外で従事している。
  2. 労働時間の算定が困難である。
(2)専門業務型裁量労働制

【例】新商品、新技術の研究開発等の専門職

【要件】

  1. 業務の性質上、時間配分等の裁量度が高いこと。
  2. 使用者が具体的な指示を行うことが困難なこと
  3. 労使協定を締結し届け出ていること。
(3)企画業務型裁量労働制

【例】企画、立案、調査および分析を行うホワイトカラー

【要件】

  1. ルーティンワークでない業務に従事すること。
  2. 労使委員会を設置していること。
  3. 労使委員会の決議によること。

管理・監督者

管理・監督者とは、監督もしくは管理の地位にある者は、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外される制度ですからトラックドライバーはこれにも通常該当しません。

ちなみに、労基法第41条第2号の管理・監督者の範囲は極めて限定的で、一般的には部長、工場長等、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。

このように、会社がイメージする管理職および管理者と労基法第41条第2号の管理・監督者とは、その定義が大きく異なり、管理・監督者の範囲が拡大解釈されがちです。

現在、外食産業や量販店の店長中心に、未払い残業代問題が連日報道されているのは、そのためです。

トラック運送会社においても、残業代節約を目的として管理・監督者を拡大解釈するのは、労務トラブルを誘発しがちなので、避けた方が賢明です。

管理・監督者の範囲

Ⅰ.原則

企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要性等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理・監督者として例外的に扱われるものではない。

Ⅱ.適用除外の趣旨

職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請せざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制に馴染まないような立場にある者に限って管理・監督者として法第41条による適用の除外が認められる。

Ⅲ.実態に基づく判断

資格および職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要がある。

Ⅳ.待遇に対する留意

定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要がある。

(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発150号)

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三重労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/home.html

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