【三重県の社労士が解説】自動車整備工場の労働安全衛生

目次

自動車整備工場の安全衛生管理体制

労働者の安全と健康を確保するため、全体を管理する者、具体的な指示を示す者など、各々の役割を明確にしたのが安全衛生管理体制です。

雇用する労働者数によって管理体制が変わりますが、この数は「事業場単位」で適用されるのが原則です。一つの会社で整備工場を複数所有していても基本的にはそれぞれの工場単位で労働者をカウントします。

例えば、同じ会社でもA整備工場が5名なら「1~9人」、B整備工場が12名なら「10~49人」の管理体制が必要となるのです。

一般的には、1つの整備工場の整備士や板金・塗装工は数名から数十名といったケースがほとんどで「1~9人」もしくは「10~49人」に該当する会社(事業場)が多いと思われます。

それぞれの役割を以下、見ていきます。

衛生管理者

衛生管理者は、有機溶剤を使用する塗装業においては重要な役割を担います。自動車整備業の場合は、第2種衛生管理者でなく第1種衛生管理者試験に合格した者でなければなりません。

なお、自動車に使用される塗料の多くには有機溶剤が含まれますが、「有機溶剤を製造し、または取り扱う屋内作業所」においては、6ヶ月以内ごとに1回、作業環境測定を行い、その結果を3年間保存しなければなりません。

目に見えない有害因子がどの程度存在しているかを把握できるため、従業員の健康確保には欠かせない作業と言えます。

産業医

健康でなければ仕事はできません。会社が労働者を雇用する責務には、健康管理も含まれるでしょう。そう考えると50人未満の事業場でも産業医を選任すべきですが、費用負担の増加は避けられません。

参考までに産業医報酬について、一般的には月額5万円程度が多いようです。

安全衛生推進者

全業種を対象とした労働災害の発生状況を見ると、安全管理者または衛生管理者の選任が義務付けられていない小規模な事業場での発生率が格段に高くなっています。

整備工場における労働災害の約8割が29人以下の事業場で多く発生しています。

安全・衛生管理において一定の知識と経験を持った者を選任しなければならないのは、このような理由かも知れません。

安全衛生推進者の資格要件として、学歴および実務経験について次の要件を満たす必要があります。

  • 大学または高等専門学校を卒業した者で、その後1年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
  • 高等学校または中等教育学校を卒業した者で、その後3年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
  • 5年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者など

なお、ここで言う「安全衛生の実務」とは、一般的には事業場内の安全衛生関係の部署(安全衛生推進室など)において関係業務に携わっていた経験があることですが、その他管理または監督者が業務を進める上で「危険個所の改善」「労働者の健康状態の確認」「健康診断等に係る事務」などを行っていたケースも含まれます。

つまり、現場作業がメインだった労働者は「安全衛生の実務に従事した経験を有する」とは言えず、安全衛生推進者として選任するには「一定の講習を修了」する必要があります。

講習は、各地区の労働基準協会などで年に数回開催されています。2日間の講習で受講料は1~2万円程度です。専任義務のある事業所はもちろん、義務のない10人未満の事業場においても、労働災害防止の重要性を認識していただき、ぜひ受講してほしいと思います。

安全衛生懇談会等

安全衛生委員会の設置義務がない50人未満の事業場においては、労働者から意見を聞く場として設けましょう。

時間が取れないようなら、会議や朝礼と一緒に行ってもいいでしょう。整備工場の労働災害の約8割が29人以下の事業場で発生していることを見れば、欠かせない取り組みと言えます。

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整備・板金・塗装業務で必要とされる免許や資格

安衛法では、労働災害防止のため、危険な業務に従事するには一定の必要な知識や経験を必要としています。大別して「就業制限」「作業主任者を選任すべき業務」「特別教育を必要とする業務」がありますが、ここではクルマ屋さんに関係するものに絞って見ていきます。

就業制限業務

整備工場の業務には、機器や工具類を取り扱わないと労働災害を発生させるおそれがある作業もあり、場合によっては周囲の労働者や一般市民を巻き込む危険性もあります。

とりわけガス溶接に関しては、マフラーのサビ穴補修やサビで固着したボルトを加熱して緩めやすくなるなど、何かと出番が多いものです。

「ガス溶接作業主任者」は試験合格が条件となり、ガス溶接技能講習終了者、玉掛け技能講習終了者の2つは技能講習を修了する必要があります。

作業主任者を選任すべき業務

労働者の指揮や設備等を管理する「作業主任者」を選任しなければならない業務は、

・アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置(10以上の可燃性ガスの容器を導管により連結または9以下の水素もしくは溶解アセチレンを400リットル以上、その他のガス1,000リットル以上)を用いて行う金属の溶接、溶断加熱の業務

・有機溶剤の製造、取扱作業

です。

作業主任者は、十分な知識や経験を有する、免許を受けた者または技能講習終了者から選任し、経験の浅い労働者を直接指導することにより、労働災害を防ぐ目的があります。

このうち「有機溶剤作業主任者」は、技能講習を修了した者が対象となります。有機溶剤は自動車に使用する塗料に幅広く使われているため、塗装作業を行う整備工場においては、まずは有機溶剤作業主任者技能講習を受講する必要があるでしょう。

特別教育を必要とする業務

従事する者に対して特別な教育をしなければならないとされている危険または有害な業務は49業務ありますが、このうち自動車整備で関連しそうなものは7業務です。(研削砥石、アーク溶接、電気取扱業務、クレーンの運転、デリックの玉掛け業務、特定粉じん作業、圧縮空気を用いて自動車用のタイヤに空気を充てんする業務)

クレーンの玉掛け業務については、免許および技能講習終了等の資格要件が定められています。

特別教育は、本来事業者が行うべきものですが、安全衛生関係団体等が実施する講習を受講することも可能です。

また、業務における十分な知識・技能を有していると認められる労働者については、特別教育を省略することができます。具体的には、その業務の上級資格を所有する者、他の事業場においてすでに特別教育を受けた者、職業訓練を受けた者などです。

なお、特別教育を行った場合、その受講生、科目等の記録を作成し、3年間保存しなければなりません。

これらの資格等は一度取得すれば生涯有効ですが、新設備の導入などにより技能や知識が追い付いていない、もしくは伴っていない場合もあります。安衛法60条の2では、このような者に対する安全衛生教育を行う努力義務を規定し、「危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針」で必要な事項を定めています。

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三重労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/home.html

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