【三重県の社労士が解説】障害年金の併合等級認定基準について

2つ以上の障害がある場合の、障害の程度の認定は以下のように行われます。

目次

障害年金併合等級認定の基本的事項

1.併合(加重)認定

併合(加重)認定は、次に掲げる場合に行われます。

  1. 障害認定日において、認定の対象となる障害が2つ以上ある場合(併合認定)
  2. 「はじめて2級」により障害基礎年金又は障害厚生年金を支給すべき事由が生じた場合(併合認定)
  3. 障害基礎年金の受給権者および障害厚生年金受給権者(障害等級が1級もしくは2級の場合に限ります)に対し、さらに障害基礎年金または障害厚生年金(障害等級が1級もしくは2級の場合に限る)を支給すべき事由が生じた場合(加重認定)
  4. 併合認定の制限

同一部位に複数の障害が併存する場合、併合認定の結果が国年令別表、厚年令別表第1または厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失する場合には、明示されている等級を超えることはできません。

※はじめて 2 級による年金とは、

既に基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後 65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準障害と他の障害とを併合して障害等級が 1 級又は 2 級に該当する程度の障害の状態に至った場合に支給される障害基礎年金及び障害厚生年金をいいます。

2.総合認定

内科的疾患の併存している場合および他の障害の認定要領において特に定めている場合は、総合的に認定が行われます。

3.差引認定

  1. 障害認定の対象とならない障害(以下「前発障害」という。)と同一部位に新たな障害(以下「後発障害」という。)が加わった場合は、現在の障害の程度(複数の障害が混在している状態)から前発障害の障害の程度を差し引いて、後発障害の障害の程度を認定します。
  2. 同一部位とは、障害のある箇所が同一であるもの(上肢または下肢については、それぞれ1側の上肢または下肢)のほか、その箇所が同一でなくても眼または耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一部位とします。
  3. 「はじめて2級による年金」に該当する場合には、適用しません。

障害年金の併合(加重)認定

2つの障害が併存する場合

個々の障害について、併合判定参考表における当該番号を求めた後、当該番号に基づき併合(加重)認定表による併合番号を求め、障害の程度を認定します。

認定例

右手親指および人差し指を併せ一上肢の4指の用を廃し、視力の良い方の眼の視力が0.1以下になった場合

併合判定参考表によれば次のとおりです。

部位障害の状態併合判定参考表
右手の障害右手の親指および人差し指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの7号‐5
両眼の障害視力の良い方の眼の視力が0.1以下になった場合6号‐1

併合(加重)認定表のより、上位の障害6号と下位の障害7号の併合番号4号を求め、2級と認定されます。

3つ以上の障害が併存する場合

併合判定参考表の「障害の状態」に該当する障害を対象とし、次により認定が行われます。

  1. 併合判定参考から各障害についての番号を求める。
  2. 1.により求めた番号の最下位及びその直近位について、併合(加重)認定表により、併合番号を求め、以下順次、その求めた併合番号と残りのうち最下位のものとの組み合わせにより、最終の併合番号を求め認定が行われます。
認定例

左下肢の大腿部から切断し、視力の良い方の眼の視力が0.1以下になり、右上肢の人差し指、中指及び小指を近位指節間関節により切断し、さらに、左上肢の親指を指節間関節より切断した場合

併合判定参考表によれば、次のとおりです。

部位障害の状態併合判定参考表
左下肢の障害一下肢の足関節以上で欠くもの4号‐6
両眼の障害視力の良い方の眼の視力が0.1以下に減じたもの6号‐1
右手の障害人差し指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの7号‐4
左手の障害一上肢の親指を指節間関節以上で欠くもの9号‐8

併合(加重)認定表により、3位の障害7号と4位の障害9号の併合番号7号を求め、次に同表により、これと2位の障害6号との併合番号4号を求め、さらに同表により、これと1位の障害4号との併合番号1号を求め1級と認定されます。

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併合認定の特例

(1)併合(加重)認定の対象となる障害の程度が、国年令別表、厚年令別表第1、厚年令別表第2に明示されている場合または併合判定参考表に明示されている場合は、併合(加重)認定の結果にかかわらず、同令別表等により認定が行われます。

認定例1

左下肢の5趾を失った後、さらに右下肢の5趾を失った場合

併合判定参考表によれば、次のとおりです。

部位障害の状態併合判定参考表
左足ゆびの障害一下肢の5趾を中足趾関節以上で欠くもの8号‐11
右足ゆびの障害一下肢の5趾を中足趾関節以上で欠くもの8号‐11

併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、 障害等級は3級となりますが、国年令別表の2級11号に「両下肢のすべての指を欠くもの」と明示されているので、併合認定の結果にかかわらず、2級と認定されます。

認定例2

右上肢の親指および人差し指と、左上肢の小指以外の4指の用を廃したものに、さらに、右上肢の親指および人差し指以外の3指と、左上肢の小指の用を廃した場合、併合判定参考表によれば、次のとおりです。

部位障害の状態併合判定参考表
右手の障害一上肢の親指および人差し指の用を廃したもの8号‐9
左手の障害親指および人差し指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの7号‐5
右手の障害親指および人差し指以外の3指の用を廃したもの10号‐13
左手の障害一上肢の小指の用を廃したもの

すでにある障害について、併合(加重)認定表により併合し、併合番号7号となり、障害等級3級となっているものに、さらに、併合判定参考表の10号に該当する障害と併合判定参考表に明示されていない程度の障害が加わったものであるが併合判定参考表の2級3号‐3「両上肢のすべての指の用を廃したもの」に該当するので、併合認定の結果にかかわらず、2級と認定されます。

(2)併合(加重)認定の結果が、国年令別表、厚年令別表第1または厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失する場合

同一部位に障害が併存する場合に生じることがあるが、国年令別表、厚年令別表第1または厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失することのないよう認定されます。

認定例1

左手関節が用を廃し、左肘関節に著しい障害が併存する場合

併合判定参考表によれば、次のとおりです。

部位障害の状態併合判定参考表
左手関節の障害一上肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの8号‐3
左肘関節の障害一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの10号‐5

併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となるが、厚年令別表第1の3級5号に「一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、上肢の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合認定の結果にかかわらず、障害手当金と認定されます。

認定例2

左足関節が硬直し、左下肢が4センチメートル短縮している場合

併合判定参考表によれば、次のとおりです。

部位障害の状態併合判定参考表
左足関節の障害一下肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの8号‐4
左下肢の短縮障害一下肢を3センチメートル以上短縮したもの10号‐7

併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となりますが、厚年令別表第1の3級6号に「一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、下肢の障害で3級となるための障害の程度は、 原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合判定の結果にかかわらず、障害手当金と認定されます。

総合認定

認定の対象となる内科的疾患が併存している場合については、併合(加重)認定の取扱いは行わずに、総合的に判断して認定が行われます。

差引認定

  1. 現在の障害の状態の活動能力減退率から前発障害の前発障害差引活動能力減退率を差し引いた残りの活動能力減退率(以下「差引残存率」という。)に応じて、差引結果認定表により認定が行われます。
  2. 後発障害の障害の状態が、併合判定参考上に明示されている場合、その活動能力減退率が差引残存率より大であるときは、その明示されている後発障害の障害の状態の活動能力減退率により認定が行われます。
  3. 「はじめて2級による年金」に該当する場合は、適用されません。
認定例1

厚生年金保険に加入する前に、右手の親指の指節間関節および小指の近位指節間関節(PIP)により切断していた者が、厚生年金保険に加入後、事故により右手の人差し指、中指及び薬指を近位指節間関節(PIP)より切断した場合

併合判定参考表によれば、次のとおりです。

障害の状態併合判定参考表活動能力減退率前発障害差引活動能力減退率
現在の障害一上肢の5指を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの6号‐767%
前発の障害一上肢の親指を指節間関節で欠き、かつ、人差し指以外の1指を近位指節間関節以上で欠くもの8号‐818%
後発の障害人差し指を併せて一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの7号‐456%

1により差引認定すると差引残存率は、67%-18%=49%となり、差引結果認定表により認定すれば、障害手当金該当となりますが、後発障害のみの活動能力減退率は56%であり、差引残存率より大であるため後発障害の活動能力減退率により厚年令別表第1の3級と認定されます。

認定例2

先天性の脳性麻痺により、両下肢に機能障害があるものが、厚生年金保険に加入後、事故が原因の脊髄損傷により両下肢の機能を完全に廃した場合

併合判定参考表によれば、次のとおりです。

障害の状態併合判定参考表活動能力減退率前発障害差引活動能力減退率
現在の障害両下肢の用を全く廃したもの1号‐6134%
前発障害身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの4号‐763%
後発障害両下肢の用を全く廃したもの1号‐6134%

1により差引認定すると、差引残存率は134%-63%=71%となり、差引認定表により認定すれば、後発障害は2級となるが、後発障害の障害の状態は、前発障害の影響を受けることなく生じたものであると判断でき、その状態が併合判定参考表の1号‐6に明示されていることから、その活動能力減退率(134%)は差引残存率より大であるため、後発障害の活動能力減退率により国年令別表の1級と認定されます。

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