日本人男性の2人に1人、女性は3人に1人が罹ると言われている、悪性新生物(以下「がん」と言います)も障害年金の対象となる病気です。がんについて、障害年金の認定基準がどう定められているか解説いたします。
がんの認定基準
がん(悪性新生物)による障害の程度は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療経過等を参考にして、具体的な日常生活状況などによって、総合的に認定されます。
1級
がんの認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状によって、日常生活上の用事などをすることが不能な程度に制限を加えるもの
2級
がんによって日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級
がんによって労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のもの
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 |
国年令別表 | 1級 | 身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
国年令別表 | 2級 | 身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
厚年令別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
がんによる障害年金の認定要領
・がん(悪性新生物)は、全身のほとんどの臓器に発生するため、現れる病状は様々で、それによる障害も様々です。
・がんの検査には、一般検査のほかに、組織診断検査、腫瘍マーカー検査、超音波検査、X線CT検査、MRI検査、血管造影検査、内視鏡検査などがあります。
・悪性新生物による障害は、次のように区分されます。
- がんそのもの(原発巣、転位巣を含む。)によって生じる局所の障害
- 悪性新生物そのもの(原発巣、転位巣を含む。)による全身の衰弱または機能の障害
- がんに対する治療の効果として起こる全身衰弱または機能の障害
がんによる障害の程度の一般状態区分表
一般区分表
区分 | 一般状態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
・がんによる障害の程度は、基本的には認定基準に掲げられている障害の状態を考慮するものであるが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 著しい衰弱または障害のため、一般区分表のオに該当するもの |
2級 | 衰弱または障害のため、一般区分表のエまたはウに該当するもの |
3級 | 著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウまたはイに該当するもの |
・がんそのものによるか、または、がんに対する治療の結果として起こる障害の程度は、上記の認定要領により認定されます。
・がんによる障害の程度の認定例は、全身衰弱と機能障害とを区分して考えることは、がんという疾患の本質から、本来不自然なことが多く、認定に当たっては組織所見とその悪性度、一般検査および特殊検査、画像診断等の検査成績、移転の有無、病状の経過と治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定されます。
・転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められる。
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