精神の障害年金認定基準について詳しく解説
認定基準では、精神の障害について次のように認定すると規定されています。
「精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、労働が著しい制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものを3級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すものを障害手当金に該当するものと認定する。」としています。
さらに、
「精神の障害は、多種であり、かつ、その症状は同一原因であっても多様である。したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。」
とあり、精神の障害については、具体的な日常生活状況を重視して認定すると読み取れます。精神の障害用の障害年金診断書では、裏面半分以上を「ウ 日常生活状況」が占めていて、日常生活についての記述が極めて大きな要素であることがうかがえます。このことについて、診断書を作成する医師が十分に認識していないことも多く、精神疾患の年金受給を阻む要因にもなっていると考えられます。
精神の障害年金認定要領について詳しく解説
認定要領は、認定基準に基づいて、実際に等級を決定するために具体的な例示等を挙げて記述されています。
(1)精神障害の区分
精神障害について、次の6つに区分をしています。
- 「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」
- 「気分(感情)障害」(以下「そううつ病」という)
- 「症状性を含む器質性精神障害」
- 「てんかん」
- 「知的障害」
- 「発達障害」
そして、それらを次の5つに分類して、認定条件を記述しています。
- 「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」
- 「てんかん」
- 「症状性を含む器質性精神障害」
- 「知的障害」
- 「発達障害」
(2)「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」の認定要領について
この区分は該当者が最も多い区分と考えられます。ここで注目する必要があるのは、
「(4)人格障害は、原則として認定の対象とならない」
「(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又はそううつ病に準じて取り扱う」
との記述です。
1つは「(4)人格障害(パーソナリティ障害と同義)は、原則として認定の対象とならない。」として、例外事項を明示していません。なので、この病名では認定されないと考えてもいいでしょう。パーソナリティ障害の場合には、パーソナリティ障害以外の傷病に罹患していないかを検証することで障害年金の受給の可能性を探ることとなります。
なお、パーソナリティ障害のICD‐10コードはF6がついたコードです。
もう1つは「(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又はそううつ病に準じて取り扱う。」とあります。
神経症が原因傷病の場合には、神経症以外の症状が見られないかを探し、そのような症状が見受けられたときには、診断書の「⑬備考」欄にその症状と症状に対応したICD‐10コードを記入することによって、原則外と認められることになります。なお、神経症のICD‐10コードはF4がついたコードです。
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(3)「症状性を含む器質性精神障害」の認定要領について
ここでは、中枢神経等の器質障害を対象として障害年金認定を規定しています。
中枢神経等の器質障害は、身体的機能と精神的機能の両面に障害が起こることが多くあります。身体的機能については神経系統の障害が適用されます。したがって、器質性障害については精神の障害と神経系統の障害の双方の認定基準に照らしてみることが必要です。
年金請求に当たっての診断書も「精神の障害用」と「肢体の障害用」等複数の診断書で障害状態を確認されることも多々あります。
障害薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害も「症状性を含む器質性精神障害の認定要領」が適用されます。ただし、禁止薬物の使用が原因で障害を負うあるいは悪化させた場合には、給付制限(国民年金法第69条・第70条、厚生年金保険法第73条、第73条の2)に該当し、年金は給付されません。
(4)「てんかん」の認定要領について
「てんかん」は、障害年金認定基準では、精神の障害に含まれていますが、病理的には神経系統の疾患です。ですのでここでの説明の対象からは外させていただきます。しかし、発作と相まって精神神経症状と認知障害が出現する場合には、前記「症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定が行われます。
(5)「知的障害」の認定要領について
知的障害については認定基準が、平成23年9月1日から大幅に改正されました。
改正前は「知的障害(精神遅滞)」として、発達障害を含んだ内容でしたが、改正後は「知的障害」として「発達障害」と区分して認定されることになりました。
知的障害も発達障害も生来のものが多く、幼少期から小学校の低学年で障害に気づくことが多かったため、同一の認定基準を適用していました。しかし、発達障害では、アスペルガー症候群のように20歳を超えてから気付いて初めて病院を受診するケースが多発し、幼少期から障害が明白な「知的障害」と区分をした方が合理的との判断があっての改正です。
具体的な改正内容は以下のとおりです。
①知的障害の例示の改正
1級と2級の例示を本人のできる行為と意思疎通とに分けて記述し、より詳細な表現になって、判断がだいぶしやすくなっています。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの (日常生活への適用が困難で常時介護を要) |
2級 | 知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの (日常生活における身辺の処理にも) |
3級 | 知的障害があり、労働が著しく制限を受けるもの |
※下線部が改正後 ( )内が下線部に相当する改正前
②知的障害と併存する精神疾患については、併合(加重)認定は行わずに、総合的に判断すると明示した
当然、新たに設けた発達障害も併合認定でなく、知的障害と一緒にして総合的に判断することになります。
③改正後は、日常生活能力等の判定にあたって、就労している場合の実態をよくとらえて判断するように、詳しい説明を加えた。
例えば、就労支援施設や小規模作業所などに参加する者ばかりでなく、雇用主が知的障害者に配慮して就労させている場合にも、単純に就労していることをもって労働能力を高く評価し、障害の程度を過小評価することがないように例示されています。
このことは、改正前には就労していることが、障害の過小評価につながって、適切な判断がなされなかった例が多々あったのではないかと推測できます。
(6)「発達障害」の認定要領について
知的障害(精神遅滞)から分けて独立させての認定要領です。
発達障害がコミュニケーション能力に欠けることを踏まえての内容になっていることが特徴です。
また、通常低年齢で発症すると言われていますが、実際には、知的障害が伴わない場合には20歳以上になって気づき受診することも多いことから、初診日を20歳以降でも認定することを明確に規定されました。このことは、知的障害は、実際の初診日でなく、すべて20歳前の初診日としていることと大きく異なります。
そして、初診日を20歳以降でも認めると明確に規定したことは、障害年金を請求するうえで知的障害と大きく異なってきます。
そして、初診日を20歳以降でも認めると明確に規定したことは、障害年金を請求するうえで知的障害と大きく異なってきます。メリットは、障害厚生年金の請求も可能なこと。デメリットとしては、初診日の証明が必要になったことと20歳以降の初診のときには保険料納付要件を問われることです。
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