【三重県の社労士が解説】聴覚の障害の障害年金

聴覚の障害での障害年金の認定基準、認定要領は以下のとおりです。

目次

聴覚の障害の障害年金認定基準

聴覚の障害についての障害認定基準は以下のとおりです。

令別表障害の程度障害の状態
国年令別表1級両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
国年令別表2級・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
・身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表第13級両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
厚年令別表第2障害手当金一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの

聴覚の障害の障害年金認定要領

聴覚の障害による障害の程度は、純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)及び語音による聴力検査値(語音明瞭度)により認定を行います。

(1)聴力レベルは、オージオメータ(JIS規格またはこれに準ずる標準オージーオメータ)によって測定を行います。

ただし、聴覚の障害により障害年金を受給していない者に対し、1級に該当する診断を行う場合には、オージーオメータによる検査に加えて、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査またはそれに相当する検査を実施します。また、その結果(実施した検査方法及び検査所見)を診断書に記載し、記録データのコピー等を提出(添付)するものとされています。

(2)聴力レベルのデシベル値は、話声域すなはち周波数500、1000、2000ヘルツにおける純音の各デシベル値をa、b、cとした場合、次式により算出します。

 平均純音聴力デシベル値=a+2b+c/4

なお、この計算式により得た値が境界値に近い場合には

 a+2b+2c+d/6 の算式により得た値を参考とします。

a:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

b:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

c:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

d:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

(3)最良語音明瞭度の算出は、次のものとされています。

  • 検査は、録音器またはマイク付きオージーオメータにより、通常の会話の強さで発声し、オージーオメータの音量を強めたり、弱めたりして最も適した状態で行います。
  • 検査語は、語音弁別能力測定用語音集により、2秒から3秒に1語の割合で発声し、語音明瞭度を検査します。なお、語音聴力表は「57s式語表」あるいは「67s式語表」とします。
  • 語音明瞭度は、次式により算出し、語音明瞭度の最も高い値を最良語音明瞭度(語音弁別能)とします。

 語音明瞭度=正答語音数/検査語数×100(%)

(4)「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは。両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のものをいいます。

(5)「両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの
  • 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの

(6)「一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの」とは、一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のものをいいます。

(7)聴覚の障害により障害年金を受給していない者の障害の状態が1級に該当する場合は、オージオメータによる検査結果のほか、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査またはそれに相当する検査結果を把握して、総合的に認定が行われます。

(8)聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがありますが、この場合には、併合認定の取扱いを行います。

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聴覚の障害について

耳の構造

外耳、中耳、内耳

耳は大きく分けて、外耳、中耳、内耳から構成されています。

外耳には耳介(耳朶)と、外耳道孔から鼓膜まで続く外耳道があります。中耳は鼓膜とその奥にある空洞(鼓室)からできていて、鼓室には槌骨、砧骨(きぬたこつ)、鐙(あぶみ)という3個の耳小骨があり、鼓膜と内耳が繋がっています。内耳には、前庭、三半規管、蝸牛(かぎゅう)があり、前庭と骨半規管は平衡感覚を司っていて。聴覚の機能としては働いていません。内耳の中で音を感じる聴覚に関係するのは蝸牛であり、その外側を固い骨に囲まれ、カタツムリのような形をしていることから、この名がつけられています。

蝸牛の中には有毛細胞という毛の生えた細胞が並んでいて、外界から入ってくる音を感じる器官として、重要な役割を果たしています。この有毛細胞で感じた音は、電気信号に変換されて、大脳の聴覚中枢に伝達され、音として認識されます。

音を伝達する役割を果たす外耳、内耳は「伝音系」、音を感じる働きがある内耳は「感音系」と呼ばれます。

難聴

聞こえの悪いことを難聴といい、障害される部位によって伝音系難聴、管音系難聴、混合性難聴に分けられます。

伝音系難聴

外耳、内耳で起こった難聴を「伝音系難聴」といいます。この難聴の場合、音を聞く機能である内耳には異常がないので、比較的容易に治療が可能です。

伝音系難聴をもたらす原因として、内耳炎、鼓膜に孔があく鼓膜穿孔、耳管狭窄症などがあります。

感音系難聴

内耳から大脳の聴覚中枢に至る感音系に障害のある難聴で、ウイルス感染、ストレプトマイシン、サルチル酸剤などの薬物、騒音難聴、大音響外傷、メニエール病、頭部外傷性、突発性などによる難聴があります。

ストレプトマイシンは、アミノ糖を含む配糖体抗生物質で結核の治療に用いられていますが、この物質は聴力障害を引き起こす可能性があり、薬物によって引き起こされた難聴は、きわめて治りにくく、聴力を回復するのが難しいです。

突発性難聴は、内耳に障害が起きるもので、特に糖尿病が発症のリスクファクターと判明しましたが、病態は依然として原因不明です。突発性難聴は、突然音声が聞き取れなくなり、めまいを誘発することが多いです。一般に50~60歳代に多く発症し、男女差はほとんどありません。

混合性難聴

伝音性難聴と感音性難聴の両方を併せ持つ難聴のことをいいます。

障害認定

聴力の障害認定は、オージオメータによる純音聴力レベル値の測定、語音明瞭度による聴力検査によって行われます。

オージオメータによる障害認定

オージオメータは、250~8,000ヘルツの周波数の純音(125、250、500、1,000、2,000、4,000、8,000ヘルツ)を出すことができる機器で、それぞれの周波数の純音の強さ(大きさ)を調節できます。検査は、日常の会話音域である500ヘルツ以上2,000ヘルツの範囲の周波数(500、1,000、2,000ヘルツ)で、音の高さ(周波数)ごとに音の大きさを変えながら行われます。受検者に聞かせ、どの程度聞こえたのかを測定し、聞こえる最も小さな音の大きさ(最小可能聴力閾値)を調べます。検査は防音室で受検者にヘッドホンを装着させて行われます。

健聴者の最小聴力レベルを0dB(デシベル)とし、これを標準として、aデシベルの強さで純音が聴取できた場合、その受験者の聴音レベルはaデシベルと判定します。

なお、聴覚の障害により障害年金を受給していない人が1級に該当する場合には、オージオメータによる検査に加えて聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査またはこれに相当する検査を実施しなければならないことになっています。

語音明瞭度による障害認定

音は聞こえているのに、何を言っているのか聞き取りづらいと言った障害がある場合に、語音明瞭度の検査が行われます。先に述べた純音聴力検査が、音が感知できるかどうかの検査であるのに対して、語音明瞭度の検査は、音色の違いを判別できるかの検査です。

検査は言葉を構成する「ア」「イ」「キ」など、日常会話で使われる頻度の高い音節50語が配列された「57s式語表」あるいは「67s式語表」を使います。

語音表の中から語音を選び出して一定の大きさの声で読み上げ、これを受検者に聞きとらせ、筆記させます。その正解率を割合(%)で表します。この検査は語音が録音されたテープやCDを使って行われます。

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日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/

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