【三重県の社労士が解説】腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症などの疾患による障害についての障害年金

その他の疾患による障害とは、障害年金では「1-目の障害」から「17-高血圧症による障害」に取り扱われていない疾患のことを指し、ここでは、「腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症」「人工肛門・新膀胱」「難病」「臓器移植」についての認定基準と認定要領についてお伝えいたします。

目次

その他の疾患による障害の認定基準

その他の疾患による障害については、次のとおりです。

令別表障害の程度障害の状態
国年令1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
国年令2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表第13級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
認定基準

その他の疾患による障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定すると、認定基準では定められています。

※弁ずる=仕事をすませる、用事をすませる

その他の疾患による障害の認定要領

その他の疾患による障害は、「1、眼の障害」から「17、高血圧症による障害」において取り扱われていない疾患を指すものです。ここでは、腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症、人工肛門・新膀胱、遷延性植物状態、いわゆる難病及び臓器移植の取扱いについてご紹介します。

腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症

ア 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症とは、胃切除によるダンピング症候群等、短絡的腸吻合術による盲管症候群、虫垂切除等による癒着性腸閉塞又は癒着性腹膜炎、腸ろう等をいいます。

イ 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症の障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとされています。

臓器・骨盤臓器の術後後遺症の解説

胃の切除後に発生するダンピング症候群とは術後、食事のあと、腹部の膨満感、圧迫感、悪心、嘔吐、さらには脱力感、めまいなどに襲われるもののことをいいます。盲管症候群とは、胃腸管の吻合手術など(片方がぶら下がっている管)ができ、そこに腸の内容物が停滞し、腹痛、下痢、貧血などの症状を呈するものです。

癒着性腹膜炎とは、腹膜内に炎症を起こすもので、吐き気や腹痛、便秘などの症状に見舞われますが、放置しておくと腸閉塞などを誘発します。

腎、尿管、膀胱などの泌尿器系、子宮などの生殖器系など骨盤臓器に対する術後後遺症の認定は、認定基準、認定要領によって症例ごとに認定が行われます。(ただし、尿路変更術、人工肛門は除きます)

人工肛門・新膀胱

ア 人工肛門又は新膀胱を造設したもの若しくは尿路変更術を施したものは、3級と認定されます。

なお、次の場合は、2級と認定されます。

  • 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設したもの又は尿路変更術を施したもの
  • 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの。なお、全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断され、さらに上位等級に認定されます。

イ 障害の程度を認定する時期は、次のように取り扱われています。

人工肛門を造設し又は尿路変更術を施した場合はそれらを行った日から起算して6カ月を経過した日(初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除く)とし、新膀胱を造設した場合はその日(初診日から起算して1年6ヶ月を超える場合を除く)とする。

なお、アの場合に障害の程度を認定する時期は、次により取り扱います。

  • 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合は、人工肛門を造設した日から起算して6カ月を経過した日又は新膀胱を造設した日のいずれか遅い日(初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除く)とする。
  • 人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した場合は、それらを行った日のいずれか遅い日から起算して6カ月を経過した日(初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除く)をする。
  • 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態にある場合は、人工肛門を造設した日又は完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6カ月を経過した日(初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除く)とする。

人工肛門・新膀胱、尿路変更術

人工肛門は消化管ストーマともいい、便や尿を人為的に体外に誘導し、その先に便などを収容する用具を取り付けたものです。新膀胱は、腸管を切り取って袋を作り、これを腹の中において膀胱の代わりとするものです。

人工肛門・新膀胱、尿路変更術については、これらを造設したことによって障害認定の等級対象となります。さらに、全身状態、術後の経過や予後などから上位級に認定されることがあります。

なお、人工肛門を造設又は尿路変更術を行った場合の障害認定は、それを行った日から起算して6カ月を経過した日とし、新膀胱を造設した場合はその日とされます。

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遷延性植物性状態

  • 遷延性植物状態については、日常生活の用を弁ずることができない状態であると認められるため、1級と認定されます。
  • 障害の程度を認定する時期は、その障害の状態に至った日から起算して3ヶ月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど認められないと認められるとき(初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除く)とする。

難病

いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり。かつ、発病は認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等を十分考慮して総合的に認定するものとされています。

なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状態等を把握して、総合的に認定されます。

難病について

原因不明であり、治療方法が確立しておらず、後遺症を残す可能性があり、患者や家族に経済的・精神的負担が大きい疾患を特定疾患、いわゆる難病と言います。難病に関しては、臨床調査研究対象疾患とされている疾患のうち、診断基準が一応確定し、難易度、重症度が高く、公費を投じないと治療方法の開発が難しいとされる疾病を特定疾患治療研究対象疾患として、医療費の自己負担の軽減策がとられています。

臓器移植の取扱い

  • 臓器移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過及び検査成績等を十分に考慮して総合的に認定が行われます。
  • 障害等級に該当するものが、臓器移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間、少なくとも1年間は従前の等級とされます。なお、障害等級が3級の場合は、2年間の経過観察が行われます。

障害の程度について

障害の程度は、一般状態が下の表の一般状態区分表のオに該当するものは1級に、同表のエ又はウに該当するものは2級に、同表のウ又はイに該当するものは3級におおむね相当するので、認定に当たっては、参考とされます。

区分一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能なもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
一般状態区分表

なお、障害年金の障害認定基準のどれにも該当しない障害については、その障害によって生じる障害の程度を医学的に判断し、最も近似している認定基準の障害に準じて認定が行われます。

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