一般社団法人での診療所の開設は、非営利型法人で行うのが大前提となります。
法人設立手続き
一般社団法人は設立準則主義を採用しているので、公証人役場で定款の認証を受けてから法務局で設立登記をすれば設立できます。公証人役場の定款認証手数料5万円のほかに、定款の謄本などの附随費用が数千円程度かかります。また、認証手続きを行政書士に依頼した場合には数万円の手数料がかかります。
登記費用は、医療法人と違い法務局の登記手数料(登録免許税)は6万円です。さらに、登記手続きを司法書士に依頼した場合は、数万円の手数料がかかります。
なお、一般社団法人を設立して診療所開設をする場合には、事前に保健所と定款案について相談しておくことをお勧めします。診療所開設許可申請をするときに、保健所から定款の変更を指摘されることがあります。先に設立登記が済んでいると変更登記が必要になってしまいます。
※設立準則主義とは、
法人の設立方式の考え方の1つで、法律上の要件を満たしていれば、主務官庁の関与を経ることなく設立が認められる方式です。規制が最も緩い方式とされています。
診療所開設手続
一般社団法人の場合は保健所に対する診療所開設許可申請の時点で法人の非営利性などの確認もしなければならないので、診療所開設許可申請に時間がかかることが多いです。
一般的には、事前相談にかなりの時間がかかります。早ければ医療法人と同じように約1カ月で完了する場合もあると思いますが、数カ月はかかると考え、早めに保健所と事前相談を行うことをお勧めします。診療所開設許可の手数料は保健所によって異なりますが、2万円前後かかります。
また、医療法人より一般社団法人の方が提出する資料も多くなります。
診療所開設後の手続き
診療所開設後の手続きの一覧は次のようになってしまいます。
開設者の住所・氏名、名称、診療科目、定款、管理者の住所・氏名等 | 保健所に対して変更後10日以内に届出 |
医師・歯科医師・看護師等の定員、敷地の面積・平面図、建物の構造概要・平面図等の変更 | 事前に保健所に対して許可申請が必要 |
定款変更 | 法務局で変更登記(ただし、定款変更後10日以内に届出は必要になる) |
決算届 | なし |
役員変更 | 法務局で変更登記 |
分院開設 | 保健所に対して診療所開設許可申請が必要(ただし、定款の目的等の記載内容により、法務局で変更登記が必要な場合もあります) |
一般社団法人は役員重任登記を除き、行政庁に定期的に提出する手続きはありません。ただし、医療法人と違い分院を必ず開設できるとは限りません。診療所を管轄する保健所によって一般社団法人による診療所開設を認めない可能性があります。
法律上は非営利法人による診療所開設は明確に認められていますが、医療は独特のローカルルールが多くある業界です。
特に、保健所は行政手続法などの法令を無視したローカルルールが多くあります。このことを知らずに、法的に問題がないからと保健所に対して事前相談をしないで一般社団法人による診療所開設の計画を進めると、許可申請という段階で計画の断念を余儀なくされる可能性があります。
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